「……わっ!! 」
つい、ウトウトしている間に、すっかり春の陽気に煽られて眠ってしまっていた私。慌てて腕時計を見ると時計の針はやがて5時30分になろうとしている。
「参ったなぁ… 」
そう言ってため息をつきながらも、とりあえずケーキの入った箱を見る。ケーキはまだ大丈夫、無事だ。すっかり安心しきりで車のエンジンを掛けた。
中川宏の住む長洲町へ向かいながら、否が応でも段々緊張感が高まってくるのが分かる。許されるものならば会いたくはない。正直な気持ちを言えば「怖い」のだ。もっとも、元々暴力団関係者だった彼が怖いのではない。「結果が出なかった」時の事が怖いのだ。
それはこの仕事を何年続けても同じ。毎回、感じる同様のプレッシャーだ。
痺れるような緊張感が私を仕方なく甘いものに走らせ、今日の小顔でシュッとしたスタイルを構成している(嘘)そんな感じで、己を緊張から逃す為に、ふざけた事しか考えない私。
やがて、まっすぐと続く国道の向こうに、彼が住んでいる団地が見えてきた。思わず身体が反応し、全身に武者震いが走る。
団地近くにあるスーパーの駐車場へ車を停めると、一旦店内へ入りレジへ向かう。夕方のスーパーはかなり込み合っていて、夕食の買い物をする主婦達がレジへと列を作っていた。そこへ丁寧に並び、自分の順番が来ると、横のショーケースに置いてある煙草の番号を確かめる。
「すみません、58番を2個下さい」
そう告げると、店員は「はい」と言ってレジの中からショーケースの鍵を取り出した。
「あの…そこの団地に少し用があるので、少しの間車を停めさせて貰えませんか? 」
「あ、……はい。どうぞ」
「ナンバーは29●です。色は白。隅の方へ駐車しておきますから」
「…分かりました」
恐らく、レジを担当している彼女にそんな事を許す許さないの権限は無いのかも知れないし、夕方で込み合っている店内だ。黙って駐車していたとしても、そこ1,2時間の話なら誰も気付かないのかも知れない。それは少しだけ面倒臭そうな彼女のそんな態度を見れば分かる。
しかし、「願掛け」という訳でもないのだが、そんな所で「ちょっとだけなら」といった気持ちで手を抜く事をしたくない私の性格の問題もある。言ってさえおけば、後々迷惑駐車でトラブルになる心配も無い。
せめてもの誠意でと、煙草2個分の料金を釣りが出ない様に、小銭で支払いを済ませた私は、その煙草を握ったまま店外へ出た。
「えっ!? 」
丁度のタイミングで前の道を走る軽自動車を、どこかで見た様な車だと思ったのだが、運転席に乗る男性の横顔を見れば、それは紛れもなく中川宏だった。相変わらず不機嫌そうに苦虫を嚙み潰したような横顔だったから間違いない。彼はやがて団地に着く所だ。
「か…かかか、帰ってきた! 」
一旦団地の中に入ってしまえば、もしかしたら「門前払い」されるかも知れない。前回と同じ、車を降りた瞬間に間に合えば、多少無理やりにでも会話しない訳にはいかないだろう。そう、直感した私は、思わず軽自動車を追い掛けて走り出していた。
(続く)
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