冷たい雨⑮ | ㈱OTS探偵社・梅木栄二の「グダグダ」小説!

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現役探偵・梅木 栄二(50代)の日々考えている事を事務所に帰った時まとめてみるつもりだったのが・・・。
いつしか勝手に小説化!へタレでド素人な小説読んでやって下さいぃ~。

孝介は昼食を摂り、広美を会社まで送ると、そのまま外回りに出て行った。そして、車の後ろ姿が見えなくなるまで見送った広美もまた、会社に戻る。

 

孝介がかつての恩師である尾田に話をしてみるという言葉が、今は何より頼りになり、心強いと思っていた。いつも肝心な部分で孝介は、必ず広美の力になってくれる。毎日仕事を頑張りながら、その傍らでは家族の事にも目を配る。そんな夫の姿を、広美は頼もしくもあり、半ば自分だけがこんなにも幸せに包まれていていいのかとも思えてしまう。

 

業務中、何度か祥子にこの事を仕事が終わったら話そうかとも考えたが、必ずしも孝介が情報を得られるとは限らない。言って「ダメでした」というぬか喜びは避けたかったし、何より、孝介に恥をかかせる訳にもいかないので、この件に関しては結果が出てから、もしも何か有力な手掛かりが得られたら話そうと広美は考えた・・・。

 

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午後になり、快晴も手伝ってか、既に洗濯物は乾いていて、時折吹き付ける涼し気な風にゆらゆらと揺れていた。祥子は慣れた手つきでそれらをカゴに取り込んで1階に降りる。

 

乾いた洗濯物を丁寧にたたみながら、これが終われば次は電動自転車に乗って近所のスーパーで買い物をし、帰って夕食を作る。途中で1度下の子を保育園まで迎えに行き、帰って家事の続きをしていれば次は上の子が学校から帰って来る・・・。

 

決められたリズムで決められた家事をこなし夫の帰りを待つ・・・何気ない毎日の繰り返しがこんなにも「幸せ」である事は、きっと雅代の事が無ければ何も感じさえしなかっただろう。そんな事をぼんやり考えながら祥子は子供達の洋服を見つめていた・・・。

 

お互い結婚し、子供が出来てから、意識した訳では無いが音信不通の時期もあった。みんな必死で子供を育てているものだとばかり思い、雅代の窮状には何ひとつ思いを馳せる事が出来なかった。仕方が無いと言えば仕方が無いのだろうが、家族の事と、親友の身に起こった出来事をごっちゃに考える事は出来ない。

 

広美だって裕福な家庭に嫁いだとはいえ、夫の会社で経理として忙しく働いている。自分は、主婦として毎日の家事さえこなせば基本、自由だ。仲のいいママ友とランチに行く時間だってある。

 

そう思い込むと何だか雅代や広美に申し訳なく思えて気が滅入ってしまう。

 

「あら、こんな時間。」

 

保育園にお迎えに行く時間が迫ってしまっている事に気付いた祥子は、急いで洗濯物を箪笥に仕舞うと今日は先にお迎えに行ってから買い物にそのまま行く事を決める。

 

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「せんせい、さようなら。」

「はい。さようなら。明日も元気に来てね。」

「うん!」

「先生、お世話になりました。」

 

次男の凌空を抱き抱え、自転車に乗せながら祥子は先生に挨拶をする。

 

「いえ、今日も凌空くん、とても元気でしたよ。」

 

教員はにこやかにその日の次男の1日を祥子に報告した。

 

「それでは先生、また明日も宜しくお願いします。」

 

祥子はそう言って保育園を離れた。

 

「今日ね、凌空はお絵描きした。」

「そう、何を書いたの。」

「あみちゃん書いた。」

 

他愛も無い会話を交わしながら県道を自転車で走る祥子。いつもより少しだけ早く母親が迎えに来てくれたせいか次男の凌空もご機嫌な様子で座っている。もっとも、この後スーパーで買い物をする時に、何かしら買ってもらえるかも知れないという期待感もあるだろう。

 

「・・・・。」

 

祥子は視線を上げた。いつもは気にならないが、ビルの上に掲げられている巨大な看板が目に付いた。

 

「調査 相談無料」

 

最近、この手の看板がやたらと目につくようになった。「探偵」と、堂々と広告している看板だ。

 

「探偵・・・・。」

 

そのキーワードが妙に引っ掛かる。「探偵」と言われても「浮気調査」くらいしか思いつかなかったが、以前何かのテレビ番組で、探偵が結婚詐欺の犯人を探し出していたシーンを思い出したのだ。

 

「尋ね人でも探してくれるのかな・・・。」

 

自分自身で色々考えてはみたが、どうにも雅代を探す方法を見出せなかった祥子は、思わずそんな事を考えていた。

 

「ママ、どうしたの。」

 

凌空が会話の途切れた祥子を振り返って尋ねた。

 

「あ、ごめんごめん。さぁ、今夜は何食べようか。」

「ぼく、カレーがいい。」

「え、カレー?この間食べたでしょ!」

 

そう言って笑いながら、祥子はスーパーへ急いだ。

 

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「え、雅代ちゃんいなくなっちゃったの。」

 

祥子の夫、賢は缶ビールを飲みながら小さく驚いた。

 

「うん・・・連絡がつかなくなったの・・・。家も空き家になってるし・・・。」

「そりゃ心配だな・・・・。」

 

子供達の今夜のおかずだった手羽先をつまみに、祥子と賢はビールを飲んでいた。子供達が寝静まった後、2人で交わす晩酌が、夫婦間の重要なコミュニケーションの時間だった。

 

賢は、雅代の事を知っていた。いや、正確に言えば、雅代と賢は同郷で幼馴染だったのだ。何とも皮肉な事に、それを知ったのは祥子と賢の結婚式に雅代が出席してきた時の事だったのだが。

 

3人は大いに驚き、盛り上がった記憶がある。まさか自分の夫になる人が、親友の幼馴染だったなんて。運命の楽しい悪戯のような気がしてならなかった。

 

「そっか・・・。」

「ねぇ、何か雅代を探す方法はないかな・・・。」

 

賢はビールをひと口飲みながら考える。

 

「どうかな・・・・。」

 

祥子は手羽先を指で裂きながらじっと賢の方を見ていた。

 

「同級生に聞いてみるのもいいけど・・・でも多分、ほとんど付き合いは無いと思うよ。」

 

賢から返ってきた言葉は少々頼りないものだった・・・。

 

(続く)

 

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弊社は情報を管理する会社である都合上、上記のお話だけに限らずブログ内、全ての「グダグダ小説」は全て「フィクション」です。実在する人物、団体は、私を含むスタッフ以外、すべて架空の物です。弊社で行われた調査とは一切関係ございませんのでご了承のうえお楽しみ戴ければ幸いです!それからお話の途中で設定が「おかしいな??」と、感じる部分があっても所詮「ド素人小説」なのでくれぐれも気になさらないように♡

                        株式会社OTS探偵社
                        代表取締役   梅木 栄二