「どうすっかい?・・・・・」
「さすがに今回だけは・・・慎重になるっすよねぇ・・・」
私もY君もさすがに困り果てていた・・・。
徹夜明けで・・・いい考えが浮かばないだけなのかも知れない・・。しかし何故だか、二人ともすぐに帰る気にはなれなかった・・・。
嫌でも今夜は決戦である・・・何とか安全且つ適切な方法で「201号室」に入室する事実を確認しなければならない・・・。
調査を悟られる事が怖いのでは無く・・・その後の「逃亡」が怖かったのだ。
「しかし・・・・対象者もそう簡単に居場所変えるっすかねぇ・・・」
Y君の言う事ももっともである・・。
しかし一度「ヤサ」が割れてしまえばご依頼者であるKさんが来る事は過去の状況から考えても充分察しがつく筈である・・・。
言い様の無いジレンマに・・・・私とY君は溜息をついた・・・。
今更であるが・・・このお話は随分過去の話である・・・その頃はまだ私達も現在の様な技術も無い時代であった・・・。
「考えてもしゃ~ないな・・・。」
「っすねぇ・・・。」
「!!」
私はふと考えた・・・。
「おい!Y君!」
「何すか?」
「Y君は今から帰ってとりあえず寝ろよ・・・。」
「社長何するんすか?」
「俺はとりあえず・・・福岡行ってくるわ・・・。」
「え!?今からっすか??」
「あぁ・・・・今から・・・」
「大丈夫っすか?徹夜明けっすよ!」
「大丈夫・・・とりあえず蛇の道は・・・蛇だろ・・・とりあえず会長とこ行って何かないか相談してくるわ・・・」
「・・・・・・・・」
確たる・・・何かがあった訳では無い・・・。しかし・・・困った時の神頼みでは無いが・・・
業界の大ベテランである九州調査業協会のT会長に相談してみようと考えたのである・・・。
通常、私達の業界は「横の繋がり」は皆無に等しい・・・系列会社なら別であるが・・・
自分達が自社に客を引き寄せる為に「平気」で他社の有りもしない「悪口」をブチまける業界である・・・。そんな中にあって・・・私はT会長と懇意にさせて頂いていた・・・。業界で「唯一」信頼出来る人と言ってよかった・・・。
「まぁ心配すんなよ・・・それよりY君、夕方対象者が動き出したらチェック頼むぞ。」
「了解っす・・・」
私は・・・そう言い残すと、上着を取り事務所を出ようとした・・・。
「社長!」
Y君が妙に神妙な声で叫んだ!!
「どうした?」
「どうか・・・・お気をつけて・・・」
余程コーヒーを買いに行かせたのが気にかかったのであろうか・・・珍しく心配してくれる・・・。
「あぁ・・・・大丈夫だよ・・・ありがとう。」
私はニッコリ微笑むとY君の「心配」を振り払うかの様に・・・再びドアに向かった・・・。
「だって・・・・だって社長・・・・」
余程「嫌な予感」でもしたのだろうか・・・・?
「だって社長!!」
私は振り返った!!
「明日!!・・・・・給料日なんっすよ!!どうか・・・無事で帰ってきて!!!」
・・・・・・・・・・
「お・・・・・お前の給料なんか・・・・・」
「知るか~・・・・!!」
私は事務所を飛び出した!!
(続く)
今から空港行って・・・乗りま~す!!
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