老人ホームでの早出職員の毎朝の日課に新聞取りがある。認知症対応型共同生活介護施設だから大半の入居者は新聞すら認識できないのだがなぜか皆さんが競って目を通す記事がある。それが「おくやみ」欄。特に地方紙では事細かに訃報が網羅されており、回し読みされているのだ。

むろん認知症にも程度の差があるので真剣に読まれているのは比較的軽度の方々で中には知人なのか故人のお葬式の日時をメモする方もおられる。施設では看取りを行なわず重篤の場合は事前に契約の病院へ転院していただくのだが数日後におくやみ欄にお名前が載ることもありお元気だった頃を偲んで職員は黙祷を捧げる。

先日は入居者さんご自身がご親族の訃報を見つけられ、慌ててお葬式に間に合うよう、施設から弔電を打たせていただいた。日本の超高齢社会の現実だと沈鬱な気持ちになったものだった。