「セイがどこにいったか、だれかしってる?」
キミヒは、廊下にいた侍女たちに聞きました。

「あら、セイさまはキサナさまと一緒に森へ行きましたよ」
「森へ?また?何しに?」

「さぁ・・・まあ、いつものことですからね。
キサナさまのやることは、奇想天外でまったく予測がつきません」

「セイさまは、いつもキサナさまのおもりで、いそがしいんだから!」

「たまにはあたしたちとお話ししてくれたらうれしいのに」

「セイさまがいると、なんだか緊張してドキドキするわよね」

「どうしていつもキサナさまと一緒なの?」
「双子だものしかたないわ」

キミヒには、侍女たちの気持ちがわかる気がしました。
セイは、影では侍女たちにとても人気がありました。


それは、キミヒの人気とは明らかに違うものでした。

表情が少なく、冷たい印象ながら、優しさを秘めているところが、

理想の男性を思うように侍女たちにはあこがれとして映っているのです。

キサナは双子の姉妹ですから、

キサナにやきもちを焼いたりすること自体おかしなことなのですけど、
いつもキサナを見守るようにしているセイを見ていると、

侍女たちはキサナをうらやましく、少しだけ焼きもちの心をもってみてしまうのでした。

キミヒも、セイは妹ですが頼りにしていました。
しっかり者で自分にないものを持っているからです。
しかしそういう侍女たちの話を聞くとキミヒは、少しだけ羨ましくもあるのでした。




そのころキサナとセイは森から城に帰る途中でした。

「うんうん、そうなの!お母さまに赤ちゃんが生まれるんだよー」

セイはやれやれと思いながらも、もうなんども立ち止まって道草をしている

キサナを温かく見つめていました。

キサナは、とにかくいつも、いろんなものや人に呼びとめられてしまいます。
それは森の植物や動物や、街の人々だったりです。

「うん、お母さま少し元気ないの、赤ちゃん生まれるからー!
薬草?ありがとう!お母さまに渡すね」

散歩にいくと、いつも足止めをくってしまい、帰り道が一向に進まないのです。

しかし今日は、

ギョクランに、もうすぐ7番目の赤ちゃんが生まれるということがみんなに伝わっており、

キサナは森のみんなから呼ばれたため、森を訪れていたのです。


ギョクランや赤ちゃんを見守る森の動物や植物たちが、
たくさんのプレゼントをキサナに託していたのでした。

「木の実?赤ちゃん食べられるかなあ?
まだむりだと思うよー。でももらっておくね!」

忙しいけれど、それを喜んで話し相手になるキサナは、幸せそのものでした。

そうして話し相手になるごとに、手にも背中にもたくさんのもらいものが増えていき、
それはセイも持ちきれないほどでした。

キサナやお母さまには、つい声をかけたり、プレゼントをしたくなる何かがあるんだな、とセイは思っていました。

「キサナ、森を抜けたら城までもう走っていくよっ!
話しかけられても、今日はもう答えないで!もう、持ちきれない!」
たくさんのプレゼントで顔が見えなくなっているセイは、やっとの思いで言いました。