6月10日 2030年
その日、日本は何も変わらない。10年前の東京オリンピックは、大成功のうちに幕を閉じ、大阪万博も大成功したが、その後も日本は殺伐とした雰囲気を残したまま時が過ぎていた。
それぞれの顔と指紋と耳紋は、名前と同じに国に登録されていた。全てが管理された世の中で、経済も政治も何もかもがすごいスピードで駆け抜け、社会の小さな不正なども横行したまま、しかし、それをいちいち咎める時間なんてなかった。今日、日本は変わる。
その日僕は朝家を出て学校につき4時間授業を消化したあと、昼飯を消化しようとしていた。twitterを見ようと携帯を開き、お馴染みの青いアイコンを押す。その時だ、一瞬画面が真っ暗になり、画面に一人の男が映し出された。
「こんにちは。日本の皆さん。今日はいかがお過ごしですか?今日は少し全国的に天気が悪いですね。私の名前はHORN。この動画は、日本中のスマホ、テレビ、パソコンで放送それています。この放送が終わればその端末には1つのアプリがイ ンストールされます。それは、アンインストールすることは出来ないアプリです。大事に使ってね。」
その言葉のあと、映像は途絶えた。あっけに取られた僕は、しばらくの間、クラスの中がざわついているのに気づかなかった。
「やばくない?」
「パぬ(半端ない。 )」
「これ、嘘だろ。どうせ。」
「そうだよ。こんなのすぐ捕まって終わりだって。」
「おいこれみろよ。これじゃね、アプリって。」
「これか。」
「開けろよ。」
「やだよ。」
「俺もやだよ。」
そして1人の男子生徒がそのアプリを開いた。
「こんにちは!開いてくれてありがと!このアプリは、そんで欲しい人を投稿することが出来るんだ。その中で投票をして1番だった人が死ぬんだ。簡単でしょ?」
HORNはそう言って手を組んだ。