感ケアのスキルに「こころの会議」というものがある。体や環境を整えてから、自分の心の中にあるいろんな感情の小人とゆったり会話していると、これまで意識できなかった感情の小人の声を聞くことができ、心が軽くなったり、行動の勇気が出たりすることがある。

この作業で注目するのは、これまで虐げられていた(抑圧されていた)感情の小人の声。いろんな気持ちが、いろんな強さで混在する心の中では、少数意見で無視されてきた声だ。感ケアでは、その声を聞くことを大切にしている。

都知事選挙があり、私たちの決定プロセスは、多数決のシステムであることが改めて思いだされた。
民主主義を習ったとき、「少数意見も大切にする」ことを教わったが、長く、その意味が分からなかった。多数決で決めれば、いずれにしてもそれに従うしかないのだから、その過程で意見を言う、言わないはあまり意味がないと思っていたのだ。

ところが、心の会議で少数意見の感情の小人の声を聞く効果かから考え直してみると、決定プロセスと行動プロセスのどこに視点を当てるかの問題だと気付いた。

民主主義では、結論は多数決で決めるので、少数者の意見を聞こうが聞くまいが決定というプロセスの中では大差ない。ところが、決定は何のためにするかというと、その後の集団の活動のためだ。

少数意見は無視されると、決定した後でも密かな抵抗力となって、集団の活動の阻害になることがある。決定プロセスの段階できちんと意見を表出させ、それなりに政治参画の感覚を持ってもらう方が、最終的には、集団がある方向に一丸となって、仮に一丸とならずともある程度のスピードを維持して動くための重要なコツになるのだろう。

多数決というシステムや、相手を言い負かす(論破する)というスキルは、決定プロセスでは、大変有効でどうしてもそこに目が行く。しかし、その後の実行エネルギーの大きさ、スピードを考えると、決定プロセスできちんと少数意見を尊重した方が、最終的には、組織がある方向に進みやすくなるのだと思う。

一人の人間を見てみても、心の中にある、いつもは無視されている少数意見を、時にはきちんと尊重し、注目する機会を持つことが、いわゆる自己一致、自分なりに首尾一貫した生活を送るためにも必要なのかもしれない。

 

<お知らせ>

「不安がりやさんの頭のいいゆるみ方」が発売されました(2024年7月)

〇7月24日、感ケアのフォローアップ講座を開催します。今回のテーマは自責です。

〇8月10日~13日、メンタルレスキュー協会で、カウンセラーのための下園壮太の夏の集中講座を開催します。現場(市ヶ谷)とオンライン参加のハイブリッド講座。一日単位の参加も可能。誰でも参加できます。メンタルレスキュー協会以外の方も参加可能です。

〇8月17日のステップアップ講座は、スキルアップ講座に変更になりました。