四月。新しい制服、新しいデスク、新しい顔ぶれ。

「よし、頑張るぞ!」と自分を奮い立たせる一方で、どこか胸の奥がザワザワとした不安に占拠されている……そんな方も多いのではないでしょうか。

実はその不安、あなたが弱いからではありません。

私たちの心の中に住んでいる「原始人」が、あなたを守ろうと必死に警戒しているせいなのです。

私たちが忘れている「人間の本性」

現代の日本は、蛇口をひねれば水が出て、夜も安全に眠れる快適な社会です。

しかし、長い人類の歴史を振り返れば、それはほんの瞬きほどの時間。私たちの脳のベースにあるのは、「いつ殺されるかわからない」原始時代のサバイバル・モードです。

食料を奪い合い、時には命を奪い合う。そんな過酷な環境を生き延びるために、人類は「他者は自分を攻撃するかもしれない存在だ」という強烈な警戒心を本能に刻み込んできました。

宇宙人が今の地球を眺めたら、「昔も今も、人間は結局争ってばかりじゃないか」と呆れるかもしれません。悲しいかな、その指摘は正論ですよね。
つまり、私たちヒトは本質的に、殺し合うかもしれない危険性をはらんでいる。言い換えると、他者への根源的に他者への強烈な恐怖を秘めた生き物なのです。

理性と本能の「ズレ」が疲れを生む

もちろん、大人の私たちは理性で考えます。

「みんな親切そうだし、いきなり攻撃されるなんてありえない。社会のルールだってあるし、大丈夫だ」と。

しかし、新しい環境に放り込まれた瞬間、心の奥底の「原始人的な部分」はこう叫びます。

「おい、この中に敵がいるかもしれないぞ!気を抜くな!」

・新しいクラス、新しい職場、新しいご近所付き合い……。

・論理では「希望」が見えていても、本能は「警戒」を最大レベルに引き上げる。

この「理性(安心したい)」と「本能(守りたい)」のギャップが、私たちのエネルギーをじわじわと削っていきます。これが数ヶ月続くと、プツンと糸が切れたように意欲が低下する、いわゆる「五月病」の状態に陥ることもあるのです。

遅発疲労を知ることで、心を守る

「どうして私はこんなにビクビクしているんだろう」と自分に幻滅する必要はありません。人はそもそも、そういうふうにできているのです。

そしてもう一つ、覚えておいてほしいことがあります。

環境に慣れ、緊張の糸が少しずつ緩んできた頃にやってくる、蓄積された疲れ。やる気の低下。私はこれを「遅発疲労(ちはつひろう)」と呼んでいます。

遅発疲労とは?

張り詰めていた緊張が解け始めるのに合わせて、隠れていた「本当の疲れ」がじわじわと表面化してくる現象のこと。

「もう慣れたはずなのに、なぜか体が重い」「なぜ、今さらなんとなく不安になってきた」

そんな症状が出た時、それを「自分の弱さ」だと思わないでください。それは、あなたの原始人的な心が、ようやく「ここは安全だ」と確信して、警戒任務を解いた証拠なのです。

大切なのは、動揺しないこと

「新しい環境になれば、しばらくして遅発疲労がくるものだ」

そうあらかじめ理解しておくだけで、心の動揺はぐっと少なくなります。

・不安になってもいい。それは生存本能だから。

・疲れてもいい。それは一生懸命、自分を守ってきたから。

この春、新しい環境で踏ん張っているあなた。

まずは、フル稼働で自分を守ってくれているご自身の「原始人の心」を、「お疲れ様、もう大丈夫だよ」と労わってあげてください。弱っている自分を鍛えなおそうなんて思わず、連休を上手に活用して、ケアしてあげましょう。

 

<お知らせ>
私が理事長をしているメンタルレスキュー協会では、人事業務担当者向けの「復職サポートスキル講座(メンタル不調者の復職支援対応 実践ポイント)を実施します。ぜひご参加ください。まだ会場(市ヶ谷)での参加も可能です。
また、4月から、AIを使ってカウンセリングトレーニングができるこころのSOSピアサポートレッスンの運用を開始しました。おかげさまで大変好評をいただいています。どんな練習メニューなのか関心のある方は、ぜひHPをのぞいてみてください。概要がわかる動画などをアップしています。