久しぶりに実家に帰り、90歳近い父母と一緒に1週間生活した。
昔、体育教師をやり、スポーツ万能でかくしゃくとしていた父だったが、さすがに足腰が弱ってきている。
また周囲によると、以前は穏やかで滅多なことでは怒らない父だったが、最近は身内などに対して、声を荒らげることが多くなったという。

一週間、観察して、二つのことに気がついた。

一つ目は、第2の自信の低下(無力感)と怒りの関係。
自分が怒りやすくなってることは父も自覚していて、よく話を聞くと、何しろ体が動かなくなっていることに、常に腹立たしい思いを抱えているということだった。
ただでさえ痛い思いや大変な疲労感と戦いながら毎日生活をしていて、周囲に迷惑をかけている。その度にいちいち以前の自分と比較して、不甲斐なさを感じている。
その中で、ちょっとした不都合が生じると、どうしても怒りが出てしまうのだ。
体が動かないという第2自信の低下が、老人の怒り易さの本質のひとつなのだろう。

もうひとつは、コミュニケーションの癖という側面。私がMC(メッセージコントロール)と呼んでいる分野のトラブルだ。

父が声を荒らげた時を、よく観察していると、実際には、父はそれほど怒っていないことも少なくない。周囲が「何を怒ってるの」と言うと、「俺は何も怒ってない」と答えるのも頷ける。

確かにそう思って冷静に観察してると、誰かを非難、攻撃しているのではなく、本質は「何かを主張している」だけのようにも見える。
問題は、言い方、声なのだ。

穏やかだとはいえ、昭和の、鹿児島の、生徒指導係の、体育教師の、野球の有力校の監督先生…ともなると、どうしても生徒に厳しく接してきた時のコミュニケーションが、ちょっとした緊張場面で表現されてしまう。

この、本人としては、ただ自分の意見を伝えているだけなのに、傍からはかなり怒ったように見えてしまうのが、周囲が困る一因になっていた。

二つ目の問題は、自分にも身に覚えがある。怒りはほとんど感じていないのに、何かを議論したり、主張したりする時に、どうしても語調がきつくなる癖があることは、以前から指摘されていた。

これまでもその癖については、修正するように努力してきたが、これからも粘り強く努力していこうと思った。
父の日も近い、いつまでも父から学ぶことは多い。

 

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