新年早々、大地震や航空機事故で大変な日々を過ごしていらっしゃる人が多いと思う。このような悲惨な出来事の後は被災者だけでなく、救援者もいつもと違う心理状態になっていく。実は被災者より支援者の方が災害後のPTSDになる確率が大きいなどという研究もあるぐらいだ。


私は自衛隊の現職の時に主に支援者のメンタルケアに関わってきたが、この時期に是非注意してほしいことを二つだけお話ししておきたい。


一つ目は支援者にもメンタルダメージがあることを知っておくこと。


ショックな現場で活動すると、非常に興奮して過敏になったり、不安が強くて、食欲がなくなったり、夜眠れないことなど当たり前に起こる。また、十分に助けられない無力感(自信喪失)や、自分の実力や能力、配慮が足りないことで、被災者により辛い思いをさせているのではないか…という自責の念を感じやすい。これらは、本当につらくその後、その職を離れる人もいるくらいだ。
 

支援者の中には、例えば、震災であれば東日本や熊本の震災を経験している人もいるだろう。そのような人は、今回の震災についてもある程度心の準備ができており、先の反応もそれほど強くないかもしれない。


ところが今回が初めてという支援者も案外多いものだ。初めてだと、反応も大きい。
その様な時に、あんまり経験豊かな先輩と自分を比べないことが大切だ。
先輩だって初めての時には同じような反応があったのだ。ダメな自分を隠して1人で悩むより、むしろ勇気を出して先輩達に今の状況を打ち明けてみると、案外先輩達の過去の辛い話をしてくれることが多いはずだ。


もう一つは、被災者から必ず感謝の言葉をもらえると思わないこと。


悲惨な出来事の後はどんな人でもイライラする。過覚醒という反応だ。そしてその怒りは援助者に向くことが多い。「援助してるから感謝されるはず…」という心構えでいると、被災者の怒りを不意打ちのように受けてしまい、大きなダメージになることがある。


そういう時も是非、仲間同士で、こんな辛いことを言われた、こんな辛い思いをしたなどと打ち明けると、心の整理が進むものだ。


援助者だから、「自分は凛としていなければならない」と思いすぎない方がいい。本当に力になる支援者とは、「自分の弱さや限界を知り自分を守りながら、恒常的な支援ができる人」であることを忘れないで欲しい。

 

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