私は自衛隊で、戦術を学んだ。
大昔、敵が攻撃してくると、人々は自分の地域を守るために、兵を一線に並べて対応しようとした。一人も村に入れないという態勢だ。
ただ、騎馬が現れ、戦車が現れると、第一線の防御は簡単に突破される。今度は、突破されても、その後方でも兵が待ち構えて対応する「縦深の防御」が必要になった。

巷にあふれるストレス対処の方法は、私からすれば、一線の防御のスキルのように見える。
疲労の3段階でいえば、できるだけ第1段階にとどまろうとするスキル。
そのために、心を鍛えるとか、運動、栄養、瞑想、論理的思考、呼吸法、ポジティブシンキングなどを工夫する。もちろん、それなりに有効だ。

ところが、人生には、時に強力なストレスが現れる。知らず知らずのうちに第2段階疲労の状態に陥ることがあるのだ。いくら消毒に気をつけていても、コロナに罹ってしまったり、どんなに健康に気を配った食事をしていても、がんになることもあるのと同じだ。

疲労の第2段階になると、いつもより不安や焦りが強くなり、物事がおっくうになり、体調もすぐれない。実際にいろいろ現実的なトラブルも生じやすくなってくる。すると、うっすらと自分を責め、自信がない状態になる。頼りのストレス解消法の効果も薄くなってくる。

ただ、まだ完全に自分が機能していないわけではない。気力がある人ほど、自分に気合を入れて、仕事をし、表面を取り繕う。

戦闘に例えると、ちょうど、いくつかの戦車に突破された一戦の指揮官が、後ろを見ないで、前ばかりを見て、これまでと同じ戦いを続けるよう兵士を鼓舞している状態だ。
兵士は、もう後ろに戦車が回り込んでいることを察知しているので、なかなか戦いに集中できなくなっている。

このような時は、縦深の防御に移行するタイミングなのだ。
疲労でいえば、疲労の第一段階(第一線)、は自力で頑張る。疲労の第2段階(縦深の防御)では、誰かに相談し、医療の力を借り、休息を図る、事にシフトする。

現代社会のストレスは大変強力だ。いくら一線の防御を鍛えても、突破されることがある。それを見ないようにするのではなく、きちんと見据えて、しっかり第2段階疲労で止めることを考えておく必要がある。

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