最近は、薬よりも運動の方がうつ状態の回復や予防に有効かもしれないという研究が発表されています。


私が講演で「エネルギーが不足して心が弱くなる、つまりうつ状態になる」ということを説明すると、それでは体を鍛えてエネルギーのタンクを増やせば、心が強くなるのではないですか、と質問されることがあります。


確かに体を鍛えるとエネルギッシュになるので、トータルすればメンタル面で少しぐらい エネルギーを消耗しても、うつにはなりにくくなると思います。
ただ、この「鍛える」というイメージを間違えて持ってしまう方が多いようです。


体を鍛える、となるとランニングをしたり筋トレをしたり、激しい運動をすることを考える人が多いのですが、突発的に、よし、これからやろうと取り組む人の場合、実は、運動で体力をつけるということより、むしろ「体を鍛える⇒我慢力を鍛える⇒自信をつけたい」という構造になっていることが多いのです。


この精神構造で運動してしまうと、どうしてもオーバーワークになってしまいがちです。もしちょっとうつっぽい人がこれらをやると、逆にうつが悪化します。


うつっぽい人が運動によって心のエネルギータンクを大きくしたいと思うのなら、辛いことに耐える運動ではなく、体の柔軟性をや持久力の向上を感じられる運動、例えばヨガやストレッチ、ピラティス、ラジオ体操、ウォーキング、軽いダンスなどが有効です。また、これらは過剰なエネルギー消費を必要としません。


自分の体でまだヤレル、まだ若い、と感じることは、とても有効ですし、あるいはウォーキングなどを少しずつ続けることで、「ちょっとしたことで疲れなくなったな」と感じられることが、心のエネルギータンクを大きくするのです。


心のエネルギータンクは最大出力をあげることで大きくなるのではなく、むしろ持続力みたいなもので大きくなるとイメージした方がいいと思います。


全く運動してない人は、ほんの少しでいいので、ヨガやストレッチ、ラジオ体操、散歩などで体を動かしてみてください。この時、一回で止めるのではなく、中断してもいいので合計回数を伸ばすような意識で取り組んでください。

 

できるだけ習慣のようにするには、それらの運動を辛い体験ではなく、心地よい体験として感じるように工夫することです。


ヨガやウォーキングは、その行動の中に、楽しみや快感が潜んでいます。その快感を見つけて、それを感じながらやると続きます。また、その行為の周辺で、お友達を増やしたり、季節を感じる景色を楽しんだり、時にはおいしいものを探したりすると、運動習慣が定着しやすいものです。
運動の秋、ぜひ楽しみながら体を動かしてみましょう。