人は「正しい」ことをしたい動物だ。
他の動物は、食べて、安全を保ち、子孫を残すことに必死だが、人だけは、正しさに生命をかける。そしてそんな人を、周囲は尊敬する。


一方、カウンセリングの現場で感じるのは、「正しい」に縛られて、苦しんでいる人が多いということだ。自分が正しいと信じていることをしないとき、人は罪悪感を覚える。罪悪感は人の悩みの中でも、かなりつらいものだ。

 

ただ、クライアントの罪悪感を聞いていると、そのもととなっている「正しさ」に疑問を持ってしまうことも少なくない。もう少し、正しさを柔軟に考えられれば、この罪悪感を緩められるのに…と思うことが多いのだ。

ラッセル・クロウ主演の、「ノア 約束の船」という映画を見た。
ネタばれになるがポイントだけを伝えると、神は人の堕落を見て、人類を滅ぼそうと大洪水を起こした。ノアは神のお告げに従い、全ての動物のつがいを方舟に乗せた。

 

さて問題は「人」だ。ノアは自分を含め、人は絶滅すべき、それが神のご意思だと考え、妊娠の能力のある女性を方舟に乗せないつもりでいた。ところが、あるきっかけで、ノアの息子のパートナーが、子供を身ごもったのだ。ノアは悩んだ末、孫が男の子だったら残し、女の子ならその場で命を絶つことを選択する。


そして、女の子が生まれた。ノアは、家族の反対を押し切り、その子を殺そうとする。


それまでノアは、全ての命を尊重する心優しい人物、必死で神のお告げ、つまり正しいことを成し遂げようと努力する人として描かれていた。
しかし、そのシーンだけ見ると、単なる殺人鬼のように思えた。


結局、ノアは孫を殺せなかったが、その後強烈な罪悪感と戦うことになる。
そして、その罪悪感を緩めてくれたのが…

カウンセラーの視点からも、最後のシーンはとても興味深かった。
ぜひ、機会があれば、皆さんもご覧いただきたい。レミゼ同様、迫力があり、いろんなことを考えさせてくれる映画だった。

 

<お知らせ>

〇12月14日(木)、フォローアップ講座を行います。今回のテーマは、レジリエンス(PTSG)