私たちは、嫌な出来事があると、それを考えないようにして、乗り切ろうとする。


これは感ケア5(刺激(連続性)、体調・疲労、防衛記憶、自信、対処法)の「対処法」に当たる。

 

この「考えないようにする」という対処法は、現実的な刺激から「離れる」ためには大変有効な手段だ。もちろん、物理的に離れられれば一番いい。それができなければ、時間的に離れる、イメージ的に離れることを試みる。考えない、というのはイメージ的に離れる手段。


考えない、と同じようなスキルに「忘れる」「他のことに集中する」「(終わったこと、考えても無駄、答えは決まっている、などと)言い聞かせる」「アルコールなどの快でごまかす」などがある。


先に触れたようにこの対処法は、大変な優れモノであるので、小さい時から、このスキルだけを鍛えてきた人が多いだろう。それでだいたい乗り切ってきた。


ところが、全てのスキルがそうだが、このスキルにも限界(欠点、デメリット)がある。
それは、現実の刺激から距離をとるには適切だが、思い返しに対して使うと、防衛記憶を育てやすいということ。


嫌なことをされた、忘れてしまう。それはそれでOK。でも、当然、その人のことを思い出す。嫌な気分がするので、また必死に忘れてしまう。何とかやり過ごし日常に戻る。しかしまた思い出す…。結局、何度もその人の嫌なイメージを思い出すことになり、その人の邪悪、危険な部分が増幅された防衛記憶が出来上がりやすい。


それを防ぐのが感ケアの「触れる」というスキル。
思い返し記憶には、触れていく。その時は感情に巻き込まれないように、「青体」を作り、記憶とのちょうどよい距離をとり、慣れていく。すると、記憶にうまくアクセスできて、慣れが生じ、新しい見方が生まれる。防衛記憶とならず、「過去」のファイルに収まっていく。


我慢強い人が、恨みを育て、ある時暴発するのは、この「触れる」という感情のケアのスキルを知らないからだ。