死にたい気持ちを持つ人に、どう言葉をかければいいか…、よく講演や雑誌のインタビューで聞かれる。先日も樺澤先生のYOUTUBEのライブでも同じ質問を受けた。


人は、ある局面を打開するために、「どう行動するか」「どう言うか」を具体的に教えてほしい。それがわかると、その局面を打開できると思うからだ。
しかし、現実にはあまりにも様々な要素があり、それゆえ、「こうすればいい」という万能の方法論(行動や言葉かけ)はないのだ。


…というと、何の光もなくなる。そこで、あえて方向性を示すことにする。


死にたい人には「寄り添えばいい」
ただ、「寄り添う」はカウンセラーも好んで使う言葉だが、具体的にどうすればいいかの指針にはなりにくい。


寄り添うをイメージアップしてもらうため、初めての海外の大会に一人で臨むスポーツ選手を想像してもらう。自分がその立場ならどうだろう。大会は楽しみでもあるが、海外に行く、そこで生活する、大会の準備をするなどに、いろんな不安が生じる。


その時に、友達や家族の一人が、その海外遠征に同行してくれるとしたらどうだろう。その友人は、競技を代わってくれるわけでも、アドバイスをくれるわけでもない。ただ、一緒についてきてくれ、いろいろと身の回りのことを一緒にこなしてくれる。練習や試合に対する不安の話し相手にもなってくれる。それだけで、本当に心強い。
実際に遠征費を選手が持ち、自分と同行してくれるマネージャーを雇う選手がいるのもうなずける。


これが寄り添う感じだ。その人の人生の苦境を代わってあげることはできない。下手にその人の人生にアドバイスもしない。でも、比較的近くにおり、身の回りの世話を焼き、必要なら話し相手になる。普通の、日常的気づかいをするだけなのだ。


死にたい気持ちを抱えている人は、内面の問題を抱えながら、日常生活を送るのさえ難しくなっている。その日常生活を支え、孤独でない環境を作るだけでも、大きな支援になることを覚えておいてほしい。