昨夜バイエルン国立バレエのライブストリーミングで、アレクセイ・ラトマンスキーの新作について投稿しました。


いや、もう予想外に良かったです!


冒頭に狂言回しとしてシェール・ワグマンがソロで物語を始めます。

第一部はハムレットとオセロに想を得た、悲劇的な愛の物語で、主人公は円熟した超絶技巧ダンサーのオシエル・グネオ。元々良く飛ぶ、廻る事で有名なダンサーですが、嫉妬や苦しみや殺意というネガティブ感情が燃え上がっていく様子が伝わります。


第二部はテンペストの、魔法の島の王プロスペローをチンハイ・ジャン、娘ミランダをマディソン・ヤング、空気の精アリエルをアントニオ・カサリーニョ、島の怪物キャリバンをヨナ・アコスタ。

嵐で船で転覆させる海の精を18人の群舞が演じます。


ラトマンスキーは本当にクラシックの舞踊への深い造詣と愛がありつつ、音楽性が豊かで、舞踊言語も豊富です。群舞にも揃ってフェッテをさせるなど、若い世代のコールドダンサー達のテクニックも存分に活かしています。だからこの海の精の群舞も本当に楽しく見ました。


バランシンがダンス言語を拡張したのに、NYCB内に知財を独占し続けてるのと違い、ラトマンスキーは各国のバレエ団に惜しみなく新作を振り付けてくれるのは有難い事です。


そしてなんとなんと贅沢な配役と踊りでしょう!

配役がドンピシャで、軽く若々しく舞うカサリーニョ、恋の喜びを表現するヤング、怪物のアコスタがドラマを伝え、これは全幕ものに発展できるのでは、と思いました。


第三部はロミオとジュリエットで、オペラ歌手二人のデュエットとワグマンの叙情的なソロで始まり、ジュリアン・マッケイとマリア・バラノヴァを中心とする複数カップルの踊りで構成されています。悲恋のドラマというより、どちらかと言うとチャイコフスキーの音楽が主役で、ダンサー達が美しい音楽を感情を伴って視覚化してくれている感じがあります。


今回の主役たちはほとんどローザンヌの入賞者達で、欧州を中心に踊ってきた新進ダンサーが中心です。正直、毎年のローザンヌが無ければ私は彼らをインスタで追うこともなく、このストリーミングを知ることもなかったです。


イーゴリ・ゼレンスキーが芸監当時のバイエルンについては全く関心がありませんでしたが、元パリ・オペラ座のローラン・イレールが2022年に代わってから、急に若いスターダンサーが揃うカンパニーに変貌し、私も注視するようになりました。


ローザンヌが、「振付家をインスパイアする」ダンサーを選んでくれているお陰で、このような新作も生まれ、バレエ界も未来に向かう事ができる感じがします。


新年から本当に素晴らしいものを見せてもらいました。