昨日から、所属している業界団体の会合で大阪に出張していたが、その中で珍しい場所の視察をしたので、ブログに残しておこう。
行ったのは「大阪市環境局舞洲工場」というゴミ処理場
ちっとも珍しくなさそうな場所だが、実は大阪オリンピックの舞台となるはずだった此花区北港の人工島「舞洲」の入口にそびえる、一見超大型ラブホテルかなと見間違える奇怪な圧倒的存在感を持つ建物がその正体なのだ。
ユニバーサルスタジオにも近く、当初はこの建物をUSLと勘違いして訪れる観光客もいたという逸話もあるようだが、実はこのゴミ処理場は、芸術の都ウィーンにおける世界的芸術家・フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサー氏の設計で作られた芸術作品なのである。
誰でもふらっと入って行けるわけではなく、環境局宛に事前の電話予約をして一日3回の団体見学でしか見られないそうではあるが、改めてその場に立ってみるとその巨大さとヨーロッパ芸術家の作り上げた世界にただ圧倒される。
ある意味、日本の建築物としては希少価値が非常に高い施設のようだが、おいなのはそれだけ贅の限りを尽くして建てられた施設の正体がただのゴミ処理場だということ。
しかし外観のド派手さだけではなく内部にも手を抜くことなく、最新の高性能焼却炉が据え付けられていて、ダイオキシンも発生させる隙を与えぬ超高熱で不燃物も可燃物も無差別焼却で、焼却能力は1日に900トン
それでも大阪市24区のうち此花区と福島区の僅か2つの区の処理能力とのことで、大阪市には9つの焼却場があるのである。
この写真のクレーンの手は広げると直径6mもあり、ひとつかみで回収車6台分のゴミをつかんで焼却炉に運ぶのだ。
また雨水や蒸気の再利用はもちろん、建物緑化も推進していて、フンデルトヴァッサー氏が掲げる「技術、エコロジーと芸術の調和」というコンセプトが、実によく体現されている。
もちろん発生する臭いもガス洗浄塔で塩化水素や硫黄酸化物を除去し、綺麗になった排ガスのみ煙突から大気中に排泄されるため、煙突からの煙は出ない。
自然界には直線や同一物が存在しないという考えから、建物のデザインは意識的に曲線が採用され、窓もひとつひとつ違った形にデザインされており、敬遠されがちなゴミ焼却場が町のシンボルとなり、多くの人にエコロジーを意識させる素晴らしい建物であることは事実だ。
総工費609億円、デザイン料9000万円とも言われるこの施設、実際はこういうデザインをしていない処理場も同じような費用をかけて作っており、このデザイン料だけが他の施設より高いぐらいなのだが、市民からは無駄なことをしてとのブーイングも多いらしい。
でもこういう発想で注目を集め、見学も多くなり、結果としてゴミ意識が高まるんだったら結果良しかもしれないね。
「束縛されるな、追随するな、定規で引いたものには不信を、直線は胸に抱くな、自由であれ、そうすれば何者にも脅かされぬであろう」…フンデルトヴァッサーの哲学が表現されたこの施設…橋本知事が忌み嫌う、派手で虚飾に満ちた今の大阪市政を象徴するかのようでもあるが、ここは公金無駄遣いの議論は置いといて、まずはウィーンに行った気になってフンデルトヴァッサーの世界に思う存分浸っていただくのはいかがかな()
フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサー氏はこの建物の完成も見ずに2000年に亡くなったようだが、この舞洲工場のすぐ隣の舞洲スラッジセンターという、下水処理場で汚水を処理した後に残る汚泥を高熱で燃やして処理する汚泥処理施設も彼の遺作。
今回はそちらは見なかったが、大阪市の職員さんの話によるとそちらの見学も面白いらしい。
というわけでブログに残したいぐらいユニークな施設見学でした~