ブルターニュ地方の伝統菓子「クイニーアマン」。ブルターニュ語で「バター(amann)」のお菓子(kouign)」 という意味だ。カリカリにキャラメリゼされた、バターがジューシーで、みっしりとしていて甘塩っぱさが魅力のフランス生まれの菓子パン。
琥珀色にブリュレされキャラメル化した表面はいかにもフランス菓子っぽく、その反対側は、パイ生地の織り目が山のようにもりあがり、職人がつくった香ばしいパンに見える。どちらを表にして店頭に並べるかはお店によってまちまちで、とても気になるスイーツだ。


しかしまてよ・・・そもそもクイニーアマンはパンなのかお菓子なのか? そういえば、パティリー(お菓子屋)でもブランジュリー(パン屋)でも販売されている。どうやらこの辺にヒントがありそうだ。
そもそも、クイニーアマンとはブリオッシュ生地からつくられるヴィエノワズリ(菓子パン)と呼ばれるもので、クロワッサンの生地となるデニッシュやブリオッシュは、バゲットなどと違い、水の代わりに牛乳を用いバターと鶏卵を多く配合し、ときには砂糖も混ぜられる軽発酵パンの一つで、フランスでは朝食に楽しまれるパン生地である。素材が「焼き菓子」と同じなので、ブリオッシュやクロワッサンなどのヴィエノワズリがパティスリーなどでよくみかけるのはそういう理由からなのだ。パティスリーでバゲットはほとんど見かけないのもそういうこと。つまりクイニーアマンは、ヴィエノワズリ(菓子パン)の名のごとくパティリー(お菓子屋)でもブランジュリー(パン屋)でもつくられているのだ。そしてパティスリーはお菓子らしく、その艶やかなキャラメリゼされた面を表として好み、片やブランジュリーはパンらしい、山のように盛り上がった生地の焼き目が目立つ面を表にするのである。そして面白いことに、その表面は同じ店なのに季節によって表と裏を逆にすることもある。結局どちらが表面という厳格な定義はなく、まあ両A面の菓子パンということになるのかな。最終的にどちらの面を表にするかは、つくっている職人の好みでもあるが(笑)。

次回は、アンリ―・ルルーの行列する美味しいクイニーアマンを紹介します⇒