(*^▽^)v- 8月8日は「近畿地方のある場所について」を鑑賞しました。ちょうどこの日はクライマックスが飛騨金山の金山巨石群の「男神」が下呂市で先行上映で、行きたかったのですが14時からで時間が無く、9月の一般公開を待つことにしました。
こちらは公開初日で、朝の8:20に各務原イオンシネマへ。夏休みなのでチケット売場は混んでましたが大半はジュラシック・パークの新作目当てでこちらは快適。前回は「サユリ」で血沸き肉躍った白石晃士監督作品を拝みに来ました。

原作は背筋氏の著作で、本を読んだ時にレビューを書きました。初版と文庫版、あとカクヨムでは改稿や補足があるみたいすね。漫画化もされており、謎解き要素が強い不可解で不気味なお話です。
(*^▽^)v- 原作を読んだ時にこれは白石晃士監督の「ノロイ」の影響があると思いましたが、やはり背筋氏は白石監督のファンだそう。ローカルニュースや失踪事件や心霊スポット動画など、ひとつひとつは無関係に見える出来事をパズルのように組み合わせると、すごく大きなモノが浮かび上がる。それは土地に伝わる古い言い伝えだったり、異界から来たモノだったりするんすね。諸星大二郎氏やクトゥルフ神話を連想させる異様な展開がたぎります。
白石監督作品はとりあえず河童にカウンターパンチを入れる、口裂け女は車で轢く、怨霊に金属バットで立ち向かう等 非常にアグレッシブでギャグと紙一重なところが魅力です。怪異に翻弄される人間すら何をするか分からず、謎の緊張感や獰猛さが魅力。恐怖を高める技量も高く、観客を殺しにかかってくるような監督さんなんですね。この「近畿地方のある場所について」の映画化を手がけると知り、とても嬉しかったです。
物語は最近はコンビニで見かけないMOOK雑誌の編集者が近畿地方の恐ろしい存在に迫るというもので、パンフレットの中で特集号が完成されててあらやだ感激↓ 古くはGON!!とか不思議ナックルズ、怖い噂といった不定期発売のうさん臭い(褒め言葉)雑誌はわたくし大好物で、バックナンバーを大切にしています。映画ではこの「超不思議マガジン」の編集長が何やら大きなネタを掴んでいて、他のスタッフに内容を明かさぬまま失踪してしまいます。
ちょうど発売日が迫っており、目玉の特集記事のデータを持ったまま編集長がいなくなった為、部下の小沢くん(赤楚衛二)は怪奇系ライターの瀬野さん(菅野美穂)にヘルプを頼み、 編集長が断片的に残していた新聞記事やビデオテープ、動画を片っぱしから見て代わりに特集記事を仕上げようとします。

近畿地方のとあるダム湖が冒頭に映し出されて感無量。何というかこれ以上ないロケーションすね。見るからに不穏です。

この超不思議マガジンの特集記事があれば説明いらず(笑) 小沢くんと成瀬さんが最初に視聴したのはニコニコ生放送の配信動画で、ニコ生と言っていいのね凄いわ。あそこは配信動画にコメントを書き込むと画面に流れる仕様になっていて、多いと弾幕と呼ばれます。多すぎると「お前らの弾幕で映像が見えない」と書き込まれるくらい。この動画はちょっと不謹慎な配信者が津山三十人殺しのコスプレをして心霊廃墟に潜入したもので、配信者は後に行方不明になってました。
そらあんた祟られるわ、なノリで廃墟に潜入した配信者は家の中に紙垂のついた無数の首吊りロープが垂れ下がる様子におののきながら2階に上がり、開かずの間になっていた子供部屋で不気味な声を聞き学習机に入っていた男の子の写真の目が動くのも見て震え上がる。弾幕には「ヤバいから帰れ」というコメントが増えますが、その中に「見つけてくださってありがとうございます」という明らかに異質なものも混じっていました。

次は下校する途中で行方不明になってしまった小学生にまつわる不気味なインタビュー。テレビの力などを見ていた方には思い当たる女の子がいて、原作ではすごく不気味なエピソードだけど連想されるのを避けるためか、映画では伝聞のみになってました。
原作では深夜に近畿地方のダム湖のそばを走っていたトラックの運転手が道路端にランドセルをしょった女の子が立ってるのを見て慌てて下りて声をかけると、女の子は異様な笑顔で「私はね、お嫁さんになったの」と言って藪の中に駆け込んでいってしまう。映画では「両目が穴のように真っ黒だった」との事で、何故か行方不明になった子の叔父がダム湖で遺体で見つかっていた。とても不可解で不気味なインタビューでした。

次はやはり近畿地方のある山の近くに林間学校で来ていた中学生の集団ヒステリー。ビデオテープに収められた粗い映像で、中学生たちが夜に「窓の外に何かおる!」と騒いでました。外は雑木林で、子供たちのざわめきの合間に「おぉおーい・・・」という間延びした男の呼び声が混じる。子供たちが面白がって囃し立てると「お山にきませんかぁ、柿もあります」と声が応じる。更に木の向こうからやけにデカい白い腕が見え、囃し立てていた女子生徒が昏倒します。それは他の生徒にもどんどん伝播していき、教師が飛び込んできて「落ち着け!落ち着け!」と叫ぶ混乱の中で映像は終わります。

そしてツーリングが趣味の男性が動画サイトに載せた映像。くだんのダム湖のそばの山にバイクでやって来た男性は、そこに小さな鳥居と祠を見つけてレポートします。「何だろうこれ」と訝しみながら祠を見ていると、どこからか「おぉおーい・・・」という声がする。男性は何かに憑かれたような振る舞いを見せ、この動画も途切れます。祠にはたくさんの人形が詰め込まれてて、山歩きで見かけたらイヤ感満載でした。声が聞こえたらダッシュで逃げますわ。

次は女子高生に流行り物を聞く街頭インタビュー。女の子たちは変なチェーンメールが来ると言い、送信されてきた不気味な画像を拡散しないと死ぬと話します。信じておらず、「来るなら来いや!」と笑い飛ばしてましたが、その子は後に集団自殺で亡くなっていました。
不気味な画像はシールになってあちこちに貼られており、近畿地方にとくに多かった。調べを進める小沢くんと成瀬さんは鳥居と人間、四隅に「女」や「了」と書かれたシールはあのツーリングの男性が訪れた祠を表してるのではないか?と考えます。

そしてネットに溢れる「見ると死ぬ動画」。これを仲間うちで見た大学生は、友人がおかしくなってしまったと話すと同時に彼自身も赤い服の異様な女に悩まされてました。その女は彼のアパートの部屋のベランダで両手を掲げてゆらゆらしており、同じ女が「見ると死ぬ動画」にも映っていた。それが撮られた団地はあの祠がある山を見渡せる場所にあり、そこに入居した一家は老母の様子がおかしくなり、窓の外に上階から投身する女性を目撃していました。

その団地では子供たちが「ましら様」という遊びをしていて、ローカルニュースに撮られていました。一見すると鬼ごっこのようだけど、鬼に捕まった子は何かを鬼に渡さねばならず、渡すものは自分の身代わりのよう。調べるうちに小沢くんと成瀬さんはあの山に伝わる「まさる様」という昔話にたどり着きます。
これは「まんが日本むかし話にこんなんあった?」と見紛うアニメパートで、昔むかし、母親が大好きなまさるという男が病で母を失い泣き暮れていたら山の上に神様が下りてきて、「おっ母はもう戻らん。代わりに嫁を見つけて甘えろ」と告げ、それを食べさせればどんな女も思いのままになるという黒ずんだ柿の実を授けます。けれども柿の季節ではなく、里の娘たちは誰も食べようとしなかった。まさるはあの山で「お山にきませんか、かきもさあるよ」と呼ばわりながらついに亡くなる。
その後 里の娘たちは山に入ると大きな柿が上からゴロゴロ転がってくるので怯えるようになり、里民はまさるの霊を慰めるために祠を建てて「まさる様」と祀るようになりました。

それを教えてくれた絵本作家は、あの団地の広場の木で小学生の男の子が首を吊り、駆けつけた母親が下ろそうと両手を掲げてゆらゆらしていたとも話します。それが赤い服の女で、首を吊った男の子は「ましろ様」の遊びで鬼に捕まり、自分を差し出したのか? その子の名前は了(あきら)といい、生配信者が潜入した廃墟に住んでいたよう。謎のシールはその子と母親、そしてまさる様=ましろ様に繋がっている?・・・

(*^▽^)v- 公開されたばかりなのてネタバレはここまで。不気味な連鎖はこれだけでなく、怪しげな新興宗教や生きていた編集長の壊れっぷりなど、愕然とするような展開です。何よりヒロインが菅野美穂さんってのが凄いすね。この方はホラー映画だとかなりインパクトがあります。
クライマックスには賛否両論あるようですが、諸星大二郎御大のような民俗学ホラーやクトゥルフ神話が好きな方には「これを見に来た」で、私もそうでしたね。生配信や携帯のチェーンメール、ニュース映像などのパーツを巧みに提示して、パズルのように組み合わせていく技法も良かったです。雰囲気は予告編でどうぞー!↓