・・・まさか元旦にこんな災害が来るとは思いませんでした。うちの方では16:20頃に少し横揺れが来て、隣町とうちの町の広報と緊急地震速報が一斉に鳴り始めて石川県能登沖が大変な事になったと知りました。こちらでは震度4で、2~3は時々ありますが「えっ?」と思った。念のため防災グッズを確認してその後何もありませんが、これはどのくらいの規模の災害になるんだろう。これ以上被災が拡大しませんようにと祈るばかりです。

(* ̄ー ̄)v- 元旦からはのんびりと溜まっている流れ旅の振り返りや買ってあった本を読んで過ごそうと思い、まだ地震が来る前に読了した1冊↓  予備知識なしで書店でパラパラ読んで購入しましたが、引き込まれて一気に読んでしまいました。


 これは不定期発売のオカルト雑誌(MOOK雑誌)のライターが一見何の繋がりもなさそうな失踪事件や心霊スポット談や怪事件、ネットの書き込みを整理して「近畿地方のある山」から始まる大きな謎に迫るというもので、読者にそれを提示してさらなる情報提供を求めるという内容。これだけなら凡百のホラーネタとしてもう何べん観たり読んだりしたか分かりませんが、すごく良く出来てます。年季の入った不思議ナックルズ(後に「怖い噂」)読者や、テレビのチカラとかアンビリバボーの杉沢村探しで鍛えてきた世代も「ほう!」と感じるかも。

( * ̄▽ ̄)v- ↓参考資料でMOOK本とはこういうの。MAGAZINE(雑誌)とBOOK(書籍)を混ぜたもので、学研の月刊ムーよりもうちょっと下世話で扱う内容はUFO、UMA、心霊、未解決事件、都市伝説などごった混ぜの闇鍋みたいです。ムーもそうですって? いえいえ好き者から見ると明確な一線があり、ムーにはオカルトグッズの広告が載ってもエロサイトの広告は載らない。そして芸能界のゴシップも載りませんキリッ!!


本書の主人公はフリーライターで、そういうMOOK雑誌の編集部に務めることになった青年が張り切って過去の取材資料を漁るうちに、辿ればタイトル通りの「近畿地方のある場所」に行き着くたくさんの情報にのめり込むのを案じつつ、自身もその核心に近づいていくお話です。小説かと言われると添付される情報量が多すぎて微妙ですが、ちゃんと小説になっている。この手の胡散臭い雑誌の愛好家を「巧いな」と唸らせる1冊です。

( * ̄▽ ̄)v- まず初めにアダルトサイトの愛好家の体験談から始まりますが、今は個人がAVを無断転載するサイトがあるんすね。もちろん違法ですが掲示板の形式を取っていて、視聴した人からのコメントも載せられる。この体験談を語った人はお気に入りの女優さんの動画を楽しんだ時、コメント欄にちょっと変な書き込みを見つけます。

「かわいい。うちにあそびにきませんか。かきもあるよ」

( ̄ー ̄) ・・・ネット慣れしてないお年寄りかな? こんな違法サイトを女優本人が見るわけないのに。

 そう思ったけど以後もそういうコメントをしばしば見かけ、つい悪戯心から女優さんになりすまして「ありがとう!遊びに行きたいけどどこに住んでます?」と書き込む。するとダイレクトに近畿地方のある場所の住所が返信されますが、Google Mapで見ると山の中だった。気味悪くなって書き込まずにいると、相手はだんだん「なぜこない」とヒートアップして、最後にこう書く。

「こしいれすべし」

(; ̄ー ̄)v- ・・・・・・・嫁に来いと?

 そして唐突に次に提示されるのは実際にあった奈良県の小学生女児行方不明事件。有名な事件でテレビのチカラでも取り上げられましたが、「近畿地方のある場所」 の峠道を通るトラックドライバーがその子としか思えない女の子が人里離れた山道に立ってるのを見かけ、近寄ってみると山の方向を凝視したまま満面の笑顔。その子は「お嫁に行くの」と言って駆け去った・・・

 次は林間学校で起きた集団ヒステリー事件。夜に宿泊施設の外の雑木林から「おーい」と呼ばわる声がして、学生たちがベランダから目を凝らすと大きな真っ白な男?が手招きしていた。その男は「山においでよ。かきもあるよ」と言っていた。

 時系列もバラバラで、内容もオチが無く、闇鍋状態のMOOK本でも使えないようなネタの羅列。自治体の不審者情報や飛び降りの多いマンションで老母がおかしくなった話とか、某巨大掲示板のオカルト板で「近畿地方の有名な幽霊屋敷」に無断侵入した実況とかが列挙されますが、この実況には明らかにそこに誘導した誰かがいた。単に心霊現象でなく、生きた人間も関わってるのも分かってきます。

 主人公に協力を頼んだ新人編集者は「近畿地方のある場所」のダム湖で亡くなり、主人公も逃れられないと悟る。終盤には何が源なのか分かりますが、逃げ方が分からない。虚実入り乱れたモキメンタリー(偽ドキュメンタリー)で、主人公の一人称の語りより列挙される情報の方がはるかに多い。それが逆にリアルに感じられるんですね。

(*  ̄▽ ̄)v- この不吉さや不穏さを映像で巧く作品化してるのは白石晃士監督。本書を読んでまずこれを思い出しました↓  ひとつひとつの異様な出来事がだんだん繋がっていく過程が巧いですね。モキメンタリー、フェイクドキュメンタリーはホラー映画に多く、登場人物が死もしくは失踪した後に見つかった映像(ファウンドフッテージ)物もよくあります。


  小説でもよくありますが、本書は胡散臭い(愛好家にとっては誉め言葉)オカルト雑誌の実録怪談や未解決事件のコラム、ネットの書き込みなどの今日的なパーツの散りばめからの誘導が巧かったです。たぶん作者さんは白石晃士監督の「ノロイ」を観てると思う。情報量でお腹いっぱいにして、不気味さや後味悪さを感じさせる良い作品でした。(ホラー的に)