お次はワクワクしないパリの裏側。私はホラー映画で初めて知りましたが、フランスは首都のパリ近郊にスラム街があるんですね。


(* ̄ー ̄)v- スラムと呼ぶと蔑称になるんじゃないかなぁ? フランスでは「郊外」を意味するバンリューと呼ばれる地域がいくつもあり、もともとは移民を受け入れるために造られた団地なんですね。大戦後の高度成長期に旧植民地のアジアや中東やアフリカ諸国から沢山の移民を受け入れましたが、オイルショック後に働き手としての需要が減って低所得かつ劣悪な住環境に苦しんでいる。地域によって豊かなバンリューもあるそうですが、パリ北東部はスラム街のようになってます。

 そんなパリ北東部のバンリューを訪れたゴンザレスさん。顔役から当地をよく知るおじさんをガイドに紹介されて、ゴミ収集車が仕事をしない現状を憂いてました。


 顔役のモハメドさんはアラブ系のよう。別にアンダーグラウンドな人ではなく自治会長のような方で、海外のメディアに現状を知ってもらうために取材を許可してくれました。


 フランスでは80年代から移民2~3世の若者による暴動が繰り返し起こっており、2015年10月にはパトカーに追われた3人の若者が変電所に逃げ込んで2人が感電死した事件をきっかけにフランス全土に暴動が広がりました。これは米国だと警官が黒人に過剰に暴力をふるって暴動になるのと同じ経緯。社会保障や働き口がなく鬱屈した若者のブチ切れが伝播するんですね。


 移民系がすべて貧困層という訳でなく、ジダンやデサイーのような存在も出てます。ジダンは昔 ピッチで侮蔑された相手に頭突きを喰らわせて退場しましたね。でもW杯でフランスが優勝したら凱旋門に顔がプロジェクトマッピングで大々的に映された。そうした「国の英雄」もいますが、低所得層の移民は見下げられる事が多くなった。とくに2~3世の若い世代にとっては耐え難い事で、カッコいいフレンチ・ラップの発展の源はそれなんですね。あれだけ女好きでニヤケ男ぽいサルコジ大統領も「秩序を乱すドチンピラが!!」なスタンスで、極右のマリー・ル・ペンの躍進も移民の制限を掲げたもの。もう自由・平等・博愛の国是が揺らいでるんですね。


 生活が苦しい移民系の人々には反社会勢力になる者もいますが、このバンリューでは自分たちから暮らしを改善せねばならないと活動してました。やはり暮らしが安定しないと人は気持ちの余裕も生まれないんすね。今は移民を受け入れた国の国民じたいにそれが不足してるので、移民を白眼視する向きも強まってる。これはフランスだけの事ではないですね。


 ああこれは、と思った移民受け入れのためのアパート。40年前に建てられたけど今は行政から取り壊す為にか住民の退去が求められてるとの事でした。


 そもそも一時受け入れのためのアパートだったので郊外にあり、交通の便も良くないそう。2015年の3月に観た「ザ・ホード」というゾンビ映画の舞台がまさにこんな建物でした。仲間を殺された刑事のチームが移民系マフィアのアジトにカチ込むとゾンビが大量発生して共闘せざるを得なくなるというお話でしたが、のっけからパリの刑事が移民をボコり倒す展開で「治安悪い・・・」としか言いようが。フランスは革命があったせいかとにかく群衆好きで、クライマックスに300人のゾンビエキストラvs1人の漢の花道があってたぎるの何の。宗教画みたいな壮麗な場面でしたねぇ。


 レビューがクッソ長いけど貼っておこう。フランスの移民問題も学べます。70年代のノワール+ゾンビのホラー映画で、なかなか重いです。対峙するマフィアはナイジェリア系移民で、ボスは単に悪人という訳ではなかったすね。

 バンリューで仕事をしてるアフリカ系の方。フランスはアフリカに植民地を持ってたので多いみたいです。植民地由来だとインドシナ系とかも。


 アパートに住むシングルマザーはハイチから来たのだそう。いろんな国から自由を求めてやって来たんですね。来た時は仕事はたくさんあったけど、今は苦しいと語ってました。


 子供たちには安定した暮らしをしてほしいそう。しまった間違えた。このバンリューのアパートが家賃9万円だそうで、ちょっとそれは高すぎるとゴンザレスさんも驚いてました。


 そして有名なブローニュの森。初めて知りましたが日が暮れるといわゆる立ちんぼの女性が路上に立ち、通りすがりのお客を待ってました。ブローニュの森がこうなのかと愕然。裸で立ってる人もいました。


 取材に応じてくれたバイオレットさんはペルーから来たと言い、トランスジェンダーなのだそう。2年前に来てまだ滞在許可証が貰えないから体を売るしかないと話してました。

 フランスは同性婚を認めていて、ジェンダーの平等が保証されてるから来たのだそう。母国では差別され暴力を振るわれる事もあったそうで、来たことは後悔しておらず、社会保障がない事だけが問題だそう。それでもここの方がいいのですね。


 フランスに限らず今はヨーロッパ全体が移民に加えて難民問題に喘いでる状態。今はさらにウクライナ難民やシリア・トルコの地震の避難民の問題もありますね。日本は狭いから昔から難民の受け入れには厳しいですが、この先はどうなるか。働き手としての技能実習生や医療福祉の専門職は受け入れてますが、技能実習生へのパワハラや入管施設での酷い仕打ちが表面化してますね。受け入れる国にも言い分はあるけれど、どこも長引くにつれてそうなりやすい。人が他者を下に見ることは  いろんな経緯から起こってしまうものなんですね。それは同じ国の人同士でも起こる事で。


 炊き出しに集まる中東系の難民。母国では普通の暮らしをしてたんですよね。やむにやまれず他の国に逃れてきて、ホームレスのように暮らすのは辛いことだなあ。他人事ではないかもしれない。


 フランスは特に↓これがあったので、建前としては自由・平等・博愛なんですね。これだけは掲げ続けなければならないもので、理念としては崇高だなと。


 ↓日本はちょっと頓挫したかな。フランスでも王制を倒す所までは良かったけど、その後の内ゲバがえげつなかった。共和制でも主だった人々が権威化すると、結局は新たな絶対王制になるんすよね。


 つまるところ理念がいくら崇高でも、実行できなければ絵に描いた餅でしかない。フランスの自由・平等・博愛の精神は現実には形骸化してるようですね。これもイデオロギーに限らずどこの国にも言える事で、それぞれに現実が飽和状態になってるんじゃないかすら。


 どんな経緯で今こうなってるのかは誰にでも分かるけど、ここからどうすればいいのかが一番難しいですね。きっと二元論では立ち行かない。どちらにもそれなりに正統性があり、一方を悪とするやり方では火種が残り続けるでしょうね。苦しいけれども「間」を取り続けるのが良いのかなぁ。


(* ̄ー ̄)v- 世界規模で言えば国連とか大戦後の価値観ですもんね。それ以前の歴史は分かってるけど、現代はまだ先が分からない。西側だと民主主義が飽和状態になっていて、だんだん壊死してるんじゃないかという感じ。さりとて東側も頭打ちっぽい。この先はどうなっていくんでしょうねぇ。