( * ̄▽ ̄)v- 豊年祭の日にやっていた「世界の何だコレミステリーSP」で、あの「山の牧場」が紹介されてわたくし歓喜。この番組では都市伝説の「きさらぎ駅」とかをCGで紙芝居のように紹介してて、これがけっこう好きなんですね私。これで「山の牧場」をやっていて嬉しかったです。


 「山の牧場」とは怖いモノ好きの方には有名なお話(謎の物件)で、1990年代の実話怪談ブームの始まりに「新耳袋」ってシリーズ本があったんですね。著者は中山市朗氏と木原浩勝氏で、蒐集した実話怪談を簡潔に99話ずつリライトして1冊にまとめたもので、10巻(第十夜)まで出てました。映像化や漫画化もされましたが、「山の牧場」は4巻(第四夜)に「山の牧場にまつわる十の話」として紹介されました。


( * ̄▽ ̄)v- これは著者のひとりの中山市朗氏が芸大の学生時代に自らが体験したお話で、卒業製作で映画を撮っていて、そのラストシーンに高いところから町を俯瞰する映像を使いたくて、実家の近くの山に車で上った時のお話。なかなか良い場所が見つからず、ふと見つけた細い道を車で上っていくと道端に「あと20メートル」とペンキで書かれたドラム缶があり、行き止まりなのか?と思いつつ進むと同様のドラム缶が「あと15メートル」「あと10メートル」「終点」と続いてた。不審に思いながら「終点」で車を下りると、目の前に大きな建物があったそうです。




 その時は映画のロケのため仲間も一緒にいましたが、地元生まれの中山市朗氏も「山の上にこんな建物があるとは知らなかった」そう。見た感じではそれは牛舎とそれに付属する建物でしたが、ここに来るまでの道は狭くて車が行き来していた様子が無く、建物にもひと気が無く使われていないような感じ。けれども廃墟ではなく、古びてもいない。しかし牛舎の周りの側溝には藁くずひとつ落ちておらず、牛を飼っていた形跡も見られませんでした。

(* ̄ー ̄)v- 不思議だったのは牛舎に隣接する事務所を覗くとガラスのフラスコなどが粉々になっていたり、天井が大きく凹んでいたり、倉庫には石灰の大きな山ができていたり。倉庫の上は居住スペースのようでしたが、その2階に上がる階段が無い。中山氏らは「何か変だ」と思いつつ、倉庫は山の斜面沿いに建ってたので斜面から2階に飛び移る要領で中に入りました。

↓そしてひとつの部屋はこう。「新耳袋」ではお札が壁にみっちり貼られているだけでなく、机に束が置かれていたと書かれてました。



 さらに床には人形がいくつも落ちていて、日本人形や博多人形などいろいろあったそう。分厚い医学書や人体のつくりを記した手書きの手帳もあったのだとか。じわじわ来ますね。


 さらに他の部屋には襖にペンキで「たすけて」の四文字。朽ち果てた廃墟なら面白半分の落書きかと思えますが、廃墟と呼ぶには新しい建物でこれは厭ですね。


 さらにもうひとつの部屋では、壁一面に謎の文字がびっしり書かれていたのだそう。私ひとりなら逃げますわ・・・


 意味不明な文字はおそろしく几帳面にびっしり書かれていて、何のためにこれだけのモチベーションが保てたか分からない。「新耳袋」には同じ文字が書かれた手帳も見たとあり、中山氏らは「ここに居てはいけない」と感じ、あえて撮影をせず慌てて引き返したそうです。得体が知れず怖かったのだそう。


 「新耳袋」では山を下りてから中山氏が地元の人々に「あそこに牧場なんか無いぞ」とか「あの山には牧場は無いけどUFOは出る」と聞いたと書かれていました。ここで心霊廃墟?にUFO要素が加わってくるんですね。後に中山氏の後輩が話を聞いて1人で向かい、「写真を撮った」と聞いたが失踪してしまった。それが1982年のことで、90年代になってから深夜ラジオで初めて話し、「新耳袋」シリーズの刊行で徐々に認知度が上がってきました。北野誠兄さんも取材しているし、新耳袋をリスペクトした「新耳袋殴り込み」も行ってますね。ナックルズ系のホラー雑誌や一般のYouTuberもよく探訪してました。


 実在するかどうかは「ある」で、兵庫県のとある低山にあり、牧場の名前も分かってます。ただ中山市朗氏は心霊系・廃墟系YouTuberやホラーファンが殺到すると地元に迷惑がかかるからと、詳しい住所等を拡散することには否定的で、私もそれに倣います。初めて知ったのが90年代で、もう長い年月が経ったんですね。その間に潜入ルポをいくつも読んだりして、新鮮味は薄れてました。


(* ̄ー ̄)v- 「山の牧場」は怖いと言うより得体が知れず、オチの無い不気味さが吸引力になってました。お札は心霊系の恐怖で、壁一面の謎の文字などは宇宙人的な恐怖。人ひとりいなくなってるのはMIB(米国でよくUFO目撃者の元に奇妙な黒スーツの男が恫喝に来た)的な脅威を感じさせる。それとはまた別に「生きてる人間の方が怖い」もあるんすね。

 もっとも不可解なのは「行くたびに何処かしら変わっている」事で、初めに中山氏が行った時にはなかったトイレ(男子便器がダーッと並んでる)があるとか、初めには無かった2階への階段が天井をぶち抜いて作られてたとか色々ありました。「新耳袋殴り込み」隊が行った時は室内にパスポートが複数落ちていたり、成人用の使用済みオムツが放置されていたり。何か物騒な目的で使われていたような形跡もあったそう。

 有名な「物件」は後からたくさんの精査をされるもので、何だコレミステリー以前にも法務局で「山の牧場」の登記簿は調べられてます。土地と建物には所有者がいるはずで、確かにある組合が所有してて代表者の住所氏名も分かるのですが、連絡がついた事はない様子。この番組でも電話は繋がりませんでした。


 地元では「ある医師が道楽で牧場をやろうとした」と中山氏が後に聞いており、断続的に経営されていた様子。番組では役場の人が「所有者に連絡はつかなくても敷地に入ると不法侵入になってしまうから」という理由で、敷地の外までロケに同行されてました。


 ごく最近のロケなのかな? 山道に「あと20メートル」などと書かれたドラム缶は無かったです。近年には小学生のキャンプ場に使われたりしてたそうですが、ロケの映像では雪道に轍の痕は無し。建物も今は使われてないみたいでした。


 「山の牧場」には畜魂碑があると言い、それは確かにありました。番組では建物やその周りは映さずCGで再現してました。


 建物じたいは今もあるんだなぁ。醒めた見方では「税金逃れなどの為に建てられた経営実態の無い建物」で、そう指摘するサイトもあります。この年になるとそれもアリかと思うたり。


 やはり山の斜面に沿って建っていて、階段があるように見えないんだとか。いや、天井をぶち抜いた階段の写真を何かで見たけど?・・・ブームの頃にいろんな人が「特定した!」と挙げていたのが別の建物だったりもあり、とりあえず北野誠兄さんの「お前ら行くな」と新耳袋殴り込みは間違っていないはず。「呪怨」の清水崇監督も同行されてました。


 果たして今も「たすけて」や、謎の文字やお札に満ちた部屋はあるんだろうか?  「新耳袋」で活字になった時に見たらもっとたぎったでしょうが、ずいぶん年月が経ったのでやけに冷静に見てました。


 低山だと古い作業小屋の跡とか割とありますよね。廃業したキャンプ場の跡地だったり。あまり気持ちは良くないもので、ちょっと近づきたくないものかも。けど逆に吸引力もあり、遠巻きに「うう・・・」とビビりながら見つめてしまうようなモノでもありますね。

( ; ̄▽ ̄)v- 山岸凉子氏の「ゆうれい談」って本には昔の漫画家仲間などの体験談がありますが、不思議な飯場?の話があるんですね。夜に車で山道に迷い込むとこうこうと明かりの灯った工事現場の小屋があり、無人なんですね。気味が悪いけどそれを見つけるとすぐに町に戻れる。県が違うのに別の人も同じ小屋を見たという体験談がありました。

 「新耳袋」には夜の山で回転寿司店を見つけて入ってみたら、何も乗ってないレーンの前でたくさんのお客がうなだれていたというエピソードもあり、夜の山で「ありえない建物」に遭遇することはたまにあるみたい。体験したくないけど何故か牽かれるモノがありますね。大昔なら狐や狸に化かされたってお話になるのかも。


 久しぶりに「山の牧場」の話題をゴールデンタイムの地上波で見られて感慨深かったです。それだけ年月が経ったからテレビで取り上げられたんでしょうね。忌まわしくも懐かしい「謎の場所」を思い出しました。