来月から仕事の訪問先がすべて変わるので、今月のうちに勤務の合間に顔見せ&必要事項の確認でてんやわんやです。


( ̄∀ ̄)v- 半年ごとに全部変わるんすね、ずっと同じ訪問先だと惰性が出るからと。自分の空き時間にお互いに他のヘルパーの訪問先について行って、来月からは1人で行く。時間の調整が大変です。


夕方は暗くなるのが早くなった。雨も降ってたので上手く撮れませんでしたが、帰りに駐車場に向かう時にキンモクセイの匂いがして、開花前のつぼみを見つけました。


( ̄∀ ̄)v- つぼみのうちからもう香る。この香りで思い出すのは、内田善美という漫画家の「星の時計のLiddell」という作品です。


大泉実成氏の「消えたマンガ家」というノンフィクションに取り上げられていた漫画家の1人ですが、ご本人が「この作品で描きたい事は描ききった」と言って引退された為、直接取材はできませんでした。(「マカロニほうれん荘」の鴨川つばめ氏のインタビューは取れていて、凄く我が身を削っていたと明かされた)


ご本人が出版業界から遠ざかられた為、復刻版がなかなか出せないと当時は聞きましたが、出てるよう。ずいぶん古い作品ですが、描き込みの緻密さと全編に満ちる夢のような雰囲気は一生ものです。


「幽霊になってしまった男の話をしようか」って独白で物語が始まる。語り手は裕福な亡命ロシア人の御曹司のウラジーミルという紳士で、幽霊になってしまったのは親友のヒューです。


舞台は米国で、頻繁に世界中を旅行しているウラジーミルが久々に米国に帰ってくると、学生時代からの親友ヒューが「いつも同じ夢を見る」と話します。


( ̄○ ̄) 眠るとヴィクトリア式の洋館にいる。真夜中で、誰もいないんだ。


ヒューには子供の頃からふっと意識が夢幻の世界に入ってしまう癖があり、ついでに短時間だけど心臓が止まる。その度にキンモクセイの香りを嗅いでいた。ウラジーミルは「またか」と気にしませんでしたが、ヒューはついに夢の洋館の中で、可愛い金髪の女の子に出会います。


( ̄∀ ̄*) すてきなお月夜ね、幽霊さん。


その少女は洋館の住人で、夢の中でそこを訪れるヒューを「幽霊さん」と呼ぶ。ヒューは夢の中で彼女と他愛のない話をして楽しみますが、その間に恋人は仕事の為にフランスに行くことになり、結果的には破局になってしまう。


( ̄○ ̄*) あなたには、きれいなものしか見えないのよ。


ヒューの恋人は大らかで女を束縛しない彼を愛しているけれど、自分は必要とされていないような気がしてそう告げる。素直にヒューにそう伝えろと言うウラジーミルに、彼女は「そんな事はできない」と呟きます。


ヒューも彼女を愛していましたが、ずっと側にいてほしいという感覚はない。幼い頃から人にも物にも執着しない性質だった為、恋愛においては損なんすね。もともと現世にもあまり執着していない上、更に未練は無くなってしまいます。ただ静かに、波風立たずに。


そんなある日、ヒューは夢の洋館の少女が自分に助けを求めた後、夢で洋館にさえ行けなくなる。そして通りがかりの骨董屋で、その少女(リドル:謎)の写真を見つけます。


ヾ( ̄○ ̄) 彼女に間違いない。彼女の写真があるなら、あの洋館も存在するはずだ。


そう言って勤めを辞め、米国中のヴィクトリア式の洋館を巡ると宣言。お金と暇は売るほどあるウラジーミルは半信半疑のまま、ますます現世から遠ざかりそうなヒューを案じて一緒に旅に出かけます。


洋館はあった。その持ち主は前の持ち主がどこかから連れてきた少女を育てていたと言い、その子が「決して娘になることはないだろう」という儚さであった事、庭にかつてキンモクセイの木があった事、自分たちも子供の頃から少女を見ていた事を語ります。


(* ̄∀ ̄) あの家は夢を見るのです。私たちもあそこで豊かな時間を過ごせましたわ。


今は洋館に住んでいない老婦人は、ヒューでなくウラジーミルに「あの少女はウラジーミルという人を待っていた」と告げ、ウラジーミルは半信半疑ですが、あり余る財力を使ってその洋館を買い取る。そしてヒューと共に洋館に滞在します。


その現実の洋館に少女は現れた。ヒューではなく、ウラジーミルが扉を開けた時、キンモクセイの枝を両手で抱えた少女が窓辺にいてどちらも驚く。ヒューは夢の中で少女が「ウラジーミルはいつ来るの?」「秋ね、キンモクセイの花が咲くころ」と囁くのを聞きます。


そしてヒューが消える。真夜中にソファでうたた寝していたウラジーミルは誰かに肩に触れられた気がして目を覚ましますが、誰もいない。胸騒ぎしてヒューの寝室に向かうとベッドは空で、まだ温もりが残っていました。


ヒューは本当に「夢を見る洋館の幽霊さん」になってしまい、ウラジーミルは洋館を管理する執事夫婦に見送られてまた旅に出ます。彼は老夫婦に「ヒュー様とはどこかで待ち合わせされるんですね」と言われ、こう答えます。


「またどこかで会うよ。どこかでね」


( ̄∀ ̄)v- 駆け足で語るとこんなあらすじ。不思議なお話で、キンモクセイの匂いがする季節になると思い出します。分からない事は多いんですが、不思議に胸に残る名作です。怖くない幽霊屋敷譚ですな。



作品中で「ウラジーミルなんて名前はロシア人にはありふれてます」と当人が言うんですが、このウラジーミルさんが来たら怖いすよね(笑)