何となく番組レビューから逸脱して、図書館で和洋の幽霊画や幽霊図鑑みたいな本を借りてきたわたくし。ラインナップいいんだわ可児郡御嵩町のみたけ郷土館。オカルト部門やけに充実。


( ̄∀ ̄)v- 日本の幽霊画の変遷もやはり外せない。


神道はあんまり幽霊に関係ないと言うと、菅原道真などを筆頭とする御霊信仰はどうなるのかと。そもそも朝廷で神道も仏教も影響力があった時代で、陰陽道とかもあったような。でも御霊は身分の高い人物しかなれなかったので、パンピーの幽霊ってのはあまり認識されてなかったかも。


仏教でも本来は幽霊というものは認めていないよう。ならば布教のツールに使ってたのは何でやねんだけど、それは大人の事情すね。物語化した方が庶民には分かりやすかったからかと。


( ̄∀ ̄)v- 初期の日本の幽霊画は1~2枚目のようなもの。思い切り足もあって身なりも普通で、教えて貰わないと誰が幽霊か分からない。やはりどこの誰か分からなければならないから、当時の想像力ではこうなったんすね。この辺は西洋と変わらない。


しかし江戸時代からかましてくる。日本のスタンダードな白い死装束・長い黒髪・そして足が無い幽霊画の創始者は江戸時代後期の絵師・円山応挙(1733~1795)と言われますが、葛飾北斎など多数の絵師が同じ様式で描いています。


( ̄∀ ̄)v- 芝居絵としては四世鶴屋南北の「東海道四谷怪談」からと言われる。鶴屋南北は脚本家であり舞台演出監督で、芝居慣れした江戸っ子をおののかせる演出を駆使し、今で言うメディアミックスも使いこなして、芝居絵や物語本、あと祟り話も流布させたんすね。


そんな「宗教とは違う幽霊の見せ方」が、舞台では壁をすり抜け、戸板を返せば裏にいる。役者がF1のピットばりの早業で扮装を変えて神出鬼没で出てくるといったもの。それを絵で表す際に、地に足がついていないという手法が生まれたのかも。


( ̄∀ ̄)v- あとなかなか深い解釈に、幽霊が長い髪の女で両手を前にダラリと垂らし、足が消えている理由にこんなのがあります。↓


( ̄○ ̄) 髪が長いのが文字通り「後ろ髪を引かれているから」。過去に執着して成仏できないから。

( ̄○ ̄) 女の姿で描かれることが多いのは、女の方が情念が強いから。仏教で女の方が悟りにくいと考えられていたのも下地にある。

( ̄○ ̄) 両手を前に垂らしているのは、未来に執着しているから。過去に縛られると同時に、未来への不安から前に進めない。

( ̄○ ̄) 足がないのは地に足がついていないから。過去と未来に執着して、足元(現実)を見ていないから。


この解釈は哲学の人からなされたものですが、お坊さんが同じ事を語っていたのを読んだことがある。そのお坊さんは「それは生きている人間そのものの姿でもある」と言われていて、ああ……と感じたものでした。


( ̄∀ ̄)v- 幽霊画、とくに肉筆画はよく掛け軸になっており、大阪や東京のお寺には個人の膨大なコレクションが寄贈されていて、期間限定で一般公開されたりしてますね。円朝コレクションを見てみたい。


始祖と言われる円山応挙は、幽霊画には落款を残していないそう。縁起がよくないと思ったからなのかは分かりませんが、葛飾北斎の筆によると言われる肉筆画も「伝・葛飾北斎」。有名無名の無数の絵師が、日本伝統の幽霊のイメージを作り上げました。


( ̄∀ ̄)v- 幕末は浮世絵師が絵新聞の挿し絵を描いたりするようになりますが、無惨絵で名高い月岡芳年、縄師(SM)道の神と呼ばれる伊藤晴雨まで来ると、今の漫画や劇画を彷彿とさせる絵柄になってます。


でもインパクトで最強レベルなのは3枚目の清水節堂(1876~1951)。西洋の遠近法や騙し絵の手法を使い、本来は絵の額になる表装も描いて、幽霊が掛け軸から浮き出してくるように見せてます。テレビから這い出してくる貞子よりめちゃくちゃ早い。これが掛かった座敷で寝たくない度120%の威力ですな。


( ̄∀ ̄)v- で、貞子さんはただ今海外の心霊動画でもあの外観が絶賛拡大中。時代がJホラー(最近元気ない)に追いついた? 「白装束に長い黒髪なら何とかなる」がもう食傷気味でございます。



然れども、見た目のインパクトはともかくホラー映画ならば見せ方が命。4~5枚目は「リング」の中田英夫監督がそれより先に撮った「女優霊」ですが、クライマックスのテレビから貞子這い出しこそ「リング」の勝ちですが、そこに至るまでの幽霊の見せ方は断然「女優霊」の方が上でした。


クライマックスまで5枚目のようなボンヤリした映し方で、昭和の心霊写真を彷彿とさせる不気味さ。クライマックスでお歯黒剥き出して普通の女性が笑顔全開だったんで、「幽霊には見えない」って批評があったんすね。だから「リング」では髪で顔を隠し、わずかに覗く目から睫毛を抜いてきた。上手かったすね。


( ̄∀ ̄;)v- あなたの知らない世界育ちには、「生きてる人間にしか見えない」って「女優霊」のクライマックスもかなり来ましたけど……



宗教とは違う、創作作品としての幽霊の見せ方は難しく、「リング」の次には、もはや生きてる時から人間だったとは思えない「呪怨」の迦椰子さんが来た。貞子ウォーキングの進化系で、ほとんど爬虫類みたいな動き方。いきなり来るのは怪談芝居のギミックのようでもあり、ぼんやり曖昧に見せる→全身を出して勝負する、は輪廻のように時代によって移り変わる気がします。



( ̄∀ ̄;)v- ちょっと「写真」に近づいてきたかな?