既に標高7000mを越えると、人間はただそこにいるだけで体力を消耗するものだそう。


( ̄ー ̄)v- 8000mを越えるとさらにそれは顕著になる。酸素濃度は1/3になり、人間が空気中から取り込む酸素より体内で消費する酸素の量が増え、そこからの高地順応はできなくなります。(だからそこまでに順応を終え、8000m以上での消耗を遅らせる)


( ̄ー ̄)v- 脳に十分な酸素が行かなくなるので、体にはさまざまな支障が出る。脳細胞は損傷を受け、動きや思考は緩慢になる。8000m以上では100m登るのに1~2時間かかると言われ、注意力や判断力が低下します。


そしてエヴェレストでは8000m以上の平均気温は氷点下25~35℃。冷凍庫より寒く乾燥しているため、細菌類が繁殖しない。だから少なくとも100体以上あるという遭難死者の遺体は野ざらしのまま、あちこちで眠っています。


( ̄ー ̄)v- エヴェレストでは、6000m以上は気流の関係でヘリコプターがホバリングできない。1996年の南東稜での大量遭難の時、ネパール陸軍のパイロットが気合いで5943m付近まで飛んで重症者を運び下ろしましたが、確かそれが世界記録だったような。


なのでデス・ゾーン(死の領域)では救助や遺体回収ができないし、登山者にはその余裕がないのが殆ど。田舎の低山でも「登山は自己責任です」という看板が登り口にありますが、ヒマラヤではそれが「8000m以上は道徳を云々する場所ではない」にシフトします。


( ̄ー ̄)v- 2枚目は1980年にノース・コルを経由して北壁から単独登頂を果たした直後のラインホルト・メスナー神。極度の疲労と脱水で活動停止中。


( ̄ー ̄)v- 3枚目は1996年の南東稜の大量遭難の際、もう駄目だと置き去りにされた後に自力で高所キャンプに下りてきたベック・ウェザース。凍傷で鼻と両手を失いましたが、「なぜ意識回復して動けたのか?」は解明されていません。(同様の生還例は複数ある)

4枚目は1996年の大量遭難の際、偶然居合わせたIMAX撮影隊のクライマーが、台湾隊の死者を運び下ろす姿。どプロ揃いかつ他隊に親切で、思いきり引きずってますが、人力だとこうするしかないんですね。


( ̄ー ̄)v- ここから本題。


本書著者のヨッヘン・ヘムレブ。そして『エヴェレスト初登頂の謎』を書いたトム・ホルツェルは、こんなデス・ゾーンを調査区域と定めていました。


それは英国が1933年に派遣したマロリー/アーヴィン捜索隊が、北東稜の8460m地点でアーヴィンのアイスアックスを見つけていたから。それはファースト・ステップの230mほど東側で、稜線から20mほど下った平らな岩の上にありました。


( ̄ー ̄)v- 1924年の遠征では、ノートン隊長と共にイエロー・バンドを下る途中のサマーヴィルがアイスアックスを落とし、気合いでもぎ取ったテントポールを代わりにしていた。でもそこは1933年にアックスが発見された場所よりかなり下で、後にアーヴィンの身内が彼のものだと確認しました。


( ̄○ ̄) アーヴィンのアックスは上から落ちてきたと言うよりも、平らな岩に置いたような感じだった。

( ̄○ ̄) 置いたのが下降中というのは考えにくい。下りる時の方が、急にバランスを崩した時に頼りにするからだ。


オデールも「アックスを使った登りに慣れていないから、帰りに持って帰ろうとして置いて行ったように思う」と証言していた。ならば8460m地点まで来ていたのは確実なので、その周辺に手がかり(遺体や遺留品)があると考えられていたんですね。


( ̄ー ̄)v- トム・ホルツェルは1986年に自分で調査するため遠征隊を率いましたが、悪天候が続き死亡事故が起きたので、捜索予定区域まで来られませんでした。


ヨッヘン・ヘムレブと共同発起人のラリー・ジョンソンは、ホルツェルの情熱を引き継ぐ形でエヴェレストにやって来た。ジョンソンは遠征隊の調整役として自分は登攀しませんでしたが、サポートのトレッキング班の誰かにこう聞かれます。


ヾ( ̄○ ̄) 何か見つかる可能性は、どのくらいだと思う?


彼はこう振り返ります。



( ̄∀ ̄) その質問について、しばらく考えた。何か言ったら、縁起が悪いことにもなりかねないって気持ちもあった。

( ̄∀ ̄) しかし、何もかも申し分ないように思えた。立派な高所クライミング・チームが捜索を担当している。非常に有能な統括責任者が、この仕事に全面的にかかわっている。私たちの研究者、ヨッヘン・ヘムレブが、マロリーとアーヴィンの足跡の見つかりそうな地点へ、クライマー達を誘導してくれる。

( ̄∀ ̄) それに、この天候だ。晴天で、乾燥していて、北壁にはほとんど雪がない。私たちはきっと成功する。そう確信した………