“1924年6月6日、午前7:30。マロリーとアーヴィンは酸素器具の他にろくな装備を持たずに第4キャンプを出発した。”


( ̄ー ̄)v- ヨッヘン・ヘムレブは簡潔にそう書いていますが、ここはトム・ホルツェルの「エヴェレスト初登頂の謎」の方が詳しいです。


“6月6日朝、マロリーとアーヴィンは オデールとハザードが彼らのために用意した《上等なサーディンのフライ》で朝食を済ませてから、酸素システムを身体にゆわえつけた。”


( ̄ー ̄;) ……2人は出発したくてうずうずしていたから、ほとんど食べず、料理人にお世辞を言わなかった。


朝食を用意したオデールが、ちょっとガッカリしたように日記にそう書いている。1枚目の写真はオデールが撮ったもので、マロリーが酸素マスクのストラップを調節するのを、アーヴィンがこちらに背を向けて待っている場面です。


( ̄○ ̄) ……これが2人の最後のポートレートになろうとは、その時のオデールはほとんど予知しなかった。


“2人は最小限必要なもの-----昼食と防風ジャケットしか持たなかった。彼らの荷物は各自合わせて約25ポンド(12.5kg)の酸素装備から成っていた。8人のポーターがそれと同じくらいの重さの荷物を運んでおり、それには全員の寝袋と、食糧と、予備の酸素シリンダーが含まれていた。”


( ̄ー ̄)v- ポーターには酸素ボンベは数が足りず、与えられていなかった。実のところ英国から50本持ってきたシリンダーは、ベースキャンプに着いた時には「多少なりとも酸素が入っていたのは35本しかなかった」。


アーヴィンがずっと直していましたが、頂上に到達するために1人につき30時間分の酸素を割り当てるとすると、4回までしかアタックできない。しかしこの土壇場から2人だけが使うなら、充分に足りる量でした。


2枚目は2人のどちらかは分かりませんが、おそらくマロリーがポケットに入れて持って行ったはずのコダックの小型カメラ。未だに見つかっておらず、コダック社は「フィルムが入っていれば現像できる可能性は高い」と言っています。


2人が第4キャンプを出発した日は晴天で風も治まっており、順調に高度7710mの第5キャンプまで登った。夕方の5時には2人に同行したポーターのうち4人が第4キャンプまで戻り、マロリーからのメモを持って来ます。


( ̄∀ ̄) 風はなし、有望と思われる。


これまでの苦難とは比べものにならない順調さ。それは天候が回復したからか、酸素を使っているからなのか?………


マロリーとアーヴィンは翌6月7日に、あと4人のポーターと共に第6キャンプ(8230m)まで登る予定。そしてオデールはサポート隊員として第5キャンプに登ります。


サポート隊員の仕事は下りてくる仲間のために食事や飲み物の支度をしたり、疲れ切って下りてくる仲間の護衛や救援、手当てなどを行うというもの。この遠征ではオデールとアーヴィンが積極的に「縁の下の力持ち」をやっており、ノートン隊長に讃えられていました。


ヾ( ̄○ ̄;)/ ……ランプを用意して、雪を溶かして飲み物用の水を作って、テントの中を快適に保って、あと料理して…………


そうしたサポート隊員が重要視されたのは、前回の遠征で重篤な状態に陥った隊員を連れて夜中に第4キャンプに下りてきた時、そこは無人で食べ物も飲み物も、雪を溶かす道具も見つけられなかったから。それが教訓となり、「地味かつ無私かつ重労働」なサポート隊員は不可欠になっていました。


(; ̄○ ̄)ゞ でもちょっと困るかな。


オデールさんにとっては、ちょっと不安要素アリ。当たり前なんですが遠征隊は第6キャンプまでの道しか知らず、それより高い所はマロリーでさえ初めて。登頂して戻って来るにせよ、途中で引き返して来るにせよ、時には救援・誘導もやらなきゃならない自分は、果たしてドコにいるのが一番いいんだろう?………


ヾ( ̄○ ̄;) ……とりあえず登ろう。


オデールはマロリー達から1日遅れで後を追いますが、彼らが発った後の第6キャンプでは夕方まで待たず、さらに高く登って行きます。

(たとえその日に2人が下りてきても、第6キャンプのテントは小さくて役に立たなかった)


オデールさんは高地順化に時間がかかった為に登頂アタッカーに選ばれませんでしたが、この辺りからスロースターターの本領発揮。ちょっと困りながら登れるだけ登るうちに、無酸素で高地に順応していました。


(; ̄ー ̄)v- ……顔からして「いい人オーラ」が出まくってるんだよな。トム・ホルツェルさんの記述がひでぇ。「いま彼はほとんど遅ればせながら驚くべきフル・パワーの状態に達しつつあり、しかしどこにも行く所がなかった」………


ヾ( ̄○ ̄;) あ。


登る途中、オデールさんは稜線上に予備の酸素セットが1つ置いてあるのを見て、自分でちょっと使ってみます。


(; ̄ー ̄) ………あんまり……効果ないかなぁ…………


マロリーとは違いオデールも、「酸素なんかより飲み物よこせ!!」だったノートン隊長やサマーヴィルも、最後まで「いや、あんまり……」でした。何と言うか、ブレないな………


やがてマロリーとアーヴィンに付き添っていたポーターの残り4人が下りてくる。その時は第5キャンプにいたオデールさんは、第6キャンプにいるマロリーから2通のメッセージを受け取ります。


1通目は今はノース・コルにいる撮影係のジョン・ノエル大尉宛て。内容はキリッとしています。


“親愛なるノエル

我々は晴天を利用するために、明日(8日)のおそらく朝早く出発する。遅くとも午後8時には、ピラミッドの下の帯を横切っているかスカイラインを登っている我々を探してくれたまえ。”

※午後8時と書いているのは間違いで、早朝に出発するなら「午前8時」のはずだと指摘されている。


既に1通目から片鱗が見えていますが、2通目はちょっと茫然としてしまうかも。


“親愛なるオデール

あんなに乱雑なままにしてきてしまって本当に申し訳ない。出かけようとした時に調理用ストーブが斜面を転げ落ちてしまったのだ。我々は暗くなる前に第5キャンプに戻りたいので、明日は必ずそれまでに第4キャンプに戻ってほしい。テントにコンパスを忘れて来たようなので、探してください。我々はコンパス無しでここにいる。ここまでは2日間に90気圧で来た。したがって多分シリンダー2本で行くつもり。とは言え、山登りにはいまいましいお荷物だ。天候はおあつらえ向き。”


(; ̄○ ̄)v- ………………………マジ?


これは判断力が低下すると言われる超高所でもさすがにアレな内容で、トム・ホルツェルは「調理ストーブをなくしてコンパスを忘れたという記述は、マロリーが行く先々に所持品をばらまいて来るという事実を確証している」と書いてます。いや、もうドジっ子なんてもんじゃない…………


(; ゜д ゜) ……………………………。


ストーブがない事は、後から来たオデールさんにはかなりの痛手。雪を溶かして飲み水を作ることもできないし、冷たい食事で我慢するしかない。オデールさんは缶詰などで夕食を済ませ、翌朝まで休みます。


翌朝は晴れていましたが、第6キャンプを目指して登っていくうちに霧が出てきた。それでも上の方では空は明るく、まだまだ晴れていた。オデールさんは「心配ない。きっとマロリー達は第6キャンプを出て、山頂のファイナル・ピラミッドを登っているだろう」と考えます。


(; ̄∀ ̄) ……自分は頂上には立てないが、地質学者として人跡未踏の地域を調査しておこう。


スロースターター恐るべし、無酸素でこの余裕。オデールさんは稜線から外れた斜面を歩き回り、辺りの岩を見回ることに熱中します。


ヾ( ̄∀ ̄;) 化石だ!


風は弱く、時折にわか雪が混じりましたが、オデールさんには気にならなかった。午後1時頃に彼は化石を見つけて喜びます。(後に化石ではなかったと判明したと、ヨッヘン・ヘムレブが書いている)


ヾ( ̄○ ̄) あれを登ってみるかな?


心身ともに絶好調。視線の先に100フィートほどの岩を見つけたオデールさんは、何となくそれに登ってみます。



その時に空に稲妻が走り、上空の視界をさえぎっていた霧が晴れ、彼は「あの光景」-----半世紀以上に渡って登山家たちの心を捉え、今も捉え続ける光景を見ました。