“もう誰にも会いたくない。”

“永遠に消え去りたい。”


このラストで完全に心を閉ざし、他者を拒絶するベティ。「異常者」に好き放題に翻弄されたベティはアラン警部だけでなく、自分を公私ともに解放してくれたマーク氏とさえ決別します。


-v( ̄○ ̄;) 再び「固い蕾」に戻った?…… いや違う。もはや性への縛りは無いが、その上で自分の世界に入ってしまった。


それはすぐれたオペラ歌手の誕生かもしれない。彼女は感情を超越した「器」になった。自らは愛憎に囚われず、故にどんな役でもこなせるだろう。


-v( ̄○ ̄;) しかしある意味、母親を超える怪物になったとも。人を傷つけ殺すような事はしなくても、彼女はもう他者を信じない?……


“もう誰にも会いたくない。”

“永遠に消え去りたい。”


冷たく醒めた表情がにわかに和らぐ。ベティはおもむろに足元の草花に身を投げ出し、幼児が無邪気に探検するように腹這いで前に進みます。


“なぜなら私は 彼らとはまったく違う、異質な存在だからだ。”


“私は風が好きだ。”


“蝶。花。木。稲穂。雨が好きだ。”


ヾ( ̄∀ ̄*)ヾ ………………………。


もはや他者の前で、こんな無邪気な笑顔を見せる事はない。ベティが芯から心を許し、くつろげるのはあれこれ自分に干渉したり、操ったり、束縛しようとしない自然だけでした。


きっと元々そうだったんだろう。ベティはステファノ君やマーク氏やアラン警部から磨かれたとも言えますが、到達したのは一切の男、一切の他者を必要としない境地でした。


( ̄ー ̄)v- これもまた一種の怪物。母親の資質を引き継いだのではなく、母親を凌ぎ昇華したもの。アウトサイダー。周辺にしか存在できぬもの……


可愛らしい野の花の間をぬって匍匐前進するベティがふと止まる。目の前で小枝の下敷きになったトカゲがぐったりしており、彼女は手を伸ばして小枝をどけてあげます。


ヾ( ̄○ ̄*) ……さあ、行きなさい。


( ̄○ ̄*) もう自由よ。



トカゲはしゅるしゅると草の間に消え、そこでラスト。何と言うかもう、大抵の作品ならオペラ座の舞台裏でアラン警部が炎上して終わりなトコですが、最後の最後まで斜め上なアルジェント劇場を堪能させて頂きました。


御大は本当はガチでオペラの演出をやりたかったそうですが、やっていたら観たかったすね。本作は「『オペラ座の怪人』への挑戦状と受け取って頂いて構わない」という気合いが入ったもので、ホラー映画ではありますが、オペラの凄みを垣間見られる品のある作品でした。


( ̄ー ̄)v- オペラにはマイナーな作品に、けっこう不気味なのもございます。あと心理劇。


完全版で補完されたのは、主に「壁の内側マスター」の少女アルマちゃんとママの関係性。母娘関係にトラウマを持つベティを描くために撮られたシーンですが、1988年の国際版(米国版)からは不要とされてカットされていました。


( ̄ー ̄)v- 確かに完全版の方が分かりやすかった。こういう事がよくあるため、アルジェント御大は基本的にハリウッドとは反りが合いません。



華やかで重厚なオペラの世界もちょっと堪能できる、思索的なホラー映画でした。


( ̄∀ ̄)v- あざっした!