このオーラスにいきなり舞台がアルプス山麓に変わるので、観ている側は一瞬ポカーン。でも、こう感じた人はけっこういるんじゃ。↓


(; ゜д ゜)v-『フェノミナ』………


このデジャヴを感じた方は多分ナカーマ。ジェニファー・コネリー主演の美少女受難映画『フェノミナ』のオープニングが、ちょうどこんなアルプス山麓ののどかな自然の中でした。


ロケ地はスイスで、これも『フェノミナ』と同じ。観光客の女性が帰りのバスに乗り遅れて殺人鬼に遭遇してしまい、切断された生首が草原をゴロンゴロンと転がって滝壷に落ちるんですが、美しい自然を背景にようもまあ。


( ̄ー ̄)v- アルジェント御大いわく「このシーンは『フェノミナ』に繋がってるよ」だそうで、お気に入りの場所だとか。高地なんで機材を担いで登るスタッフに脱落者が出て、置いてったそう。


( ̄○ ̄) 映画作りは体力が基礎だ。


だそうですが、見た目華奢で体力なさそうなのに、スピリットは体育会系だったのかアルジェント御大。お見それしてました。


閑話休題。さらにマニアックな脱線をいたしますと、フェノミナ(phenomena)は現象・事象(phenomenon)の複数形。対義語はノウメナ(noumemna)で、こちらは「本体・考えられたもの」を表すnoumenonの複数形なんですね。


( ̄ー ̄)v- ちょっと哲学とか入ってきますけど、フェノミナは「可視化された現象」。ノウメナは「仮想的な現象」。後者には単に目で見たモノでなく、個人の見方が入ったモノらしい。


以前、島村菜津というライターさんがイタリアで取材して書いた『エクソシストとの対話』って本がありまして、悪魔祓いの儀式を執り行う聖職者にこんなお話を聞いたって書いてあったんすね。


( ̄○ ̄) 悪魔憑きは殆どが精神的な問題や疾患で説明がつく。ただ10年もエクソシストをやってると、稀にこんな事例に出くわすよ。


( ̄○ ̄) 儀式の最中に、小さな男の子がこう言った。「俺はこのガキの目を通して喋ってるんだ。よく覚えておけ。お前たちがノウメナと呼ぶものを、お前たちは決して知り得ない」………


( ̄○ ̄) 真性異言(ラテン語など、悪魔祓いを受ける人が使える筈がない言語を使うこと)は稀にあるよ。でも、その子は私がちょうど「ノウメナ」と思い浮かべた時にそれを言ったんだ。


悪魔祓い師は儀式の際はとりあえず「本体」の正体を知ろうとするのですが、「お前はそれを知る事ができない」と言われたんですね。人間に見られるのは現象(フェノミナ)だけだと……なかなか高度で難解な哲学問答じゃないですか?


( ̄∀ ̄)v- ハイ脱線終わり!


風光明媚な保養地の山荘で、どうやらベティはマーク氏とくつろいでいる様子。マーク氏は窓辺で蝿(ハエ)を相手にカメラを回し、ベティが「次のパリ公演は大切よ」と話しかけてます。


(* ̄∀ ̄)『椿姫』(ラ・トラヴィアータ)を成功させなくちゃ!


おお、次の主演は『椿姫』か。原作はアレクサンドル・デュマでオペラ化したのはやっぱりヴェルディ。不治の病を抱えた美しき高級娼婦が純情な貴族青年と恋に落ちるも彼の将来を考えて突き放し、死に際にやっと偽りの愛想尽かしだったと理解される悲恋モノ。マーク氏は「主役のマルグリッドをどう演じる?」と問いかけます。


( ̄○ ̄) 弱々しく繊細に演じるか、官能的に演じるか?


(* ̄∀ ̄) 官能的にやるわ。


ああ、そういう事か。ベティはもう固い蕾じゃない。トラウマから解放されて、公私ともに充実してるんだ。


それにはマーク氏が果たした役割も大きいみたい。ベティは通いの家政婦さんに挨拶し、散歩に出かけます。


( ̄○ ̄*) ………?


澄んだ空気に緑の草原。彼方には冠雪に彩られた雄大なヨーロッパアルプス。息苦しい都会から逃れてオフ休暇を満喫するベティは、麓から駆けてくる2頭のシェパードを見て首を傾げます。


ババババババ!………


続いてプロペラ音を響かせて、麓から舞い上がってくるヘリコプター。何か少しだけ、こののんびりした美しい場所にはそぐわない……


マーク氏はカメラに集中し、糸に繋いだ蝿を昆虫学者のように撮り続ける。これは彼がベティを新しい恋人にしたと暗示するシーンにも見えますが、


「……オペラ座殺人事件に、新たに衝撃的な事実が判明しました」


( ̄○ ̄;) ん?



つけたままのテレビから、ニュースキャスターの声が背中に響いた。マーク氏は振り返り、ゆっくりとテレビに歩み寄ります。