気づけば劇場しか行き場がなかったと呟くベティ。マーク氏は余計な慰めは口にせず、「それが役者だ」という表情で彼女を見つめます。


( ̄○ ̄;) とても疲れた。楽屋で寝るわ。

( ̄○ ̄) うるさくて眠れないぞ。裏方が徹夜で作業中だ、演出を変えるからな。


明日の公演の演出を変える? 目をしばたかせるベティの手を取り、マーク氏が諭すように語ります。


( ̄○ ̄) 殺人鬼を見つける方法を考えついたのさ。目撃者がいるんだ。


( ̄○ ̄) ヤツは明日、必ず劇場に来る。捕まえるぞ。


演出が不評だから変更するほどヤワじゃなかった。マーク氏は何やらアーティスティックな仕掛けで「俺の仕事にケチつけた野郎にひと泡吹かせてやる」と、静かにお怒りのようでした。


ベティにはよく分からないけれど、自分は初日と同じに演技すればよいみたい。多少うるさくても横になって休みたい彼女は楽屋に下がり、残されたマーク氏は舞台中央で役者ばりに台詞を口ずさみます。


( ̄○ ̄)“眠れば、恐らく夢を見る”


( ̄○ ̄)“そこが問題だ”


( ̄○ ̄)“死は眠りのようなもの。永遠の眠りの中で、果たしてどんな夢を見るのか?”


( ̄○ ̄)“この世を去った後に”………


これは『ハムレット』の有名な「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」に続く台詞。敵方になってしまった婚約者オフィーリアはこれを真に受けて気が狂い、川にはまって死んでしまいます。


( ̄ー ̄)v- 癌宣告を受けた樹木希林さんが、有名なオフィーリアの川流れの絵画を模した写真を撮りましたな。あらゆる意味で鬼気迫る写真でした。


無垢なオフィーリアはハムレットに突き放されて発狂し、舞台から消える。この場面はそれを意識して、シチュエーションは似ているがまた別の「第〇幕〇場」に仕立ててるんですな。



眠れば恐らく夢を見る。マーク氏が口ずさんだ芝居の台詞のように、楽屋のソファで眠るベティは悪夢を見ていました。