公演は大成功。舞台裏に下がったベティは、関係者から口々に褒め称えられます。
( ゜∀ ゜)/ ベティ、素晴らしい。実に見事だった!
( ̄∀ ̄;) ……ありがとうございます。
離れた場所では、演出家のマーク氏がアシスタントに「不幸なんて無いでしょ?」と囁かれている。ベティは「でもライトが故障したし、客席から悲鳴が聞こえたわ」と呟きます。
( ̄○ ̄) トラブルはあったが、『マクベス』には無関係だ。
不安げなベティにきっぱり断言するマーク氏。彼も「若くして有名になるのは不幸だが、それは誰もが通る道だ」とベティの初舞台を讃えます。
( ̄○ ̄;) ……そうね。私の母も有名だったもの。
劇中ではベティのお母さんがどんなオペラ歌手でどんな亡くなり方をしたのかは語られませんが、ベティの表情は晴れやかじゃありません。晩年は不遇で、あまり公に語りたくない死に方だったんだろうか?……
(* ̄∀ ̄) 本当に見事だったわ、あなたって最高!
控え室に着替えに行くベティを、衣装係のジュリアさんが切れ間なく褒めまくる。彼女は無邪気なオーバーアクションと衣装方のプライドの高さが際立つ人で、笑顔全開でドアを閉めるといきなりテンションが下がります。
バタン( ̄ー ̄;)/ ………完璧よ。
( ̄○ ̄;) あの演出家だけが、唯一の汚点だけどね。
めっさ嫌われてるやんマーク氏。どうやら本業が「低俗な」ホラー映画監督のマーク氏は、一部の裏方さんからはあまり良く思われてないみたい。
(* ̄○ ̄) はい?
舞台衣装から私服に着替えたベティが、ドアをノックされて振り返る。すぐ外はもう舞台裏で、まだ関係者たちがガヤガヤ行き交う中、スーツ姿の紳士が戸口に立ってました。
( ̄○ ̄*) ……劇場の人?
(; ̄∀ ̄)/ あ、あの………
金髪ですっきりした容姿の紳士は、すかさず懐から一輪の薔薇を取り出して差し出します。さすがだイタリア男、隙がない。ベティは「まあ」と表情をほころばせ、粋なファンの心遣いを受け取ります。
( ̄∀ ̄*) どうもありがとう。サインも?
(; ̄∀ ̄) えっ? ああ、お願いします。アランです……
慌てて懐から手帳を取り出すイタリア紳士。ちょうど先日テレビ見たんですが、エアロスミスのスティーヴン・タイラー氏がファンのサインの求めに快く応じたところ、相手は25枚もレコードを差し出して来やがりました。
-v( ̄□ ̄;) お前それ転売する気やろ!!
と思って見ていたら、スティーヴン様は根気よく全部にサインして、ついでに相手のおでこにもサイン。(キン肉マン的な何か) おまけにその様子を撮ってたパパラッチにも気配り発揮。
ヾ( ゜д ゜) 通行人の邪魔だから、もっと近寄って撮りなよ。
ロックの人は心が広い。(あとパリス・ヒルトンが空港でサインしまくってたら飛行機に乗り遅れ、カウンターで揉めていた。オメェはそれでいいや)
ヾ( ̄∀ ̄*) ……アランね。書き書き………
しかし、気持ちよく宛名入り直筆サインを書くベティの耳にいらん声が響きます。
「警部、こちらに来てください!」
( ̄○ ̄;) 警察?………ファンなんて嘘ね?
(; ̄∀ ̄) あっ……いや、その………
ベティの機嫌は急降下。即座にイタリア紳士はバタン!と閉め出され、代わりに助監督のステファノ君が入ってきます。
( ̄○ ̄;) どうして警察がいるの?
(; ̄○ ̄) ……裏方が1人死んだからね。まったく奇妙な事件だよ。
支配人やマーク氏たちは気を遣って言わなかったけど、裏方さんの1人が客席の最上階で殺害されていた。死をもたらすと言う『マクベス』のジンクスを、ベティは否が応でも思い出します。