ハイいきなり殺害現場! 最上階からベティを堪能中の誰かが裏方さんに見つかって、「そこで何してる?」と誰何されました。


ヾ( ̄○ ̄;) 照明の邪魔だ、そこから離れ……うわっ!?


黒革手袋が素早く動いた。裏方さんは瞬時に喉を締められて、さらにどてっ腹にナイフがグサア。舞台では短剣でなく拳銃に置き換えられていたけれど、まるでマクベスによるダンカン王暗殺のよう……


ガシャン!


わずかな揉み合いのはずみで何かが客席に落下した。それは客席側の小さなシャンデリアを直撃し、飛び散る火花と煙に観客がどよめきます。


(; ̄○ ̄) !?


舞台上のベティが「なに?」って表情でそちらを見上げる。しかしオーケストラは演奏の手を止めず、彼女もすぐに気を取り直します。


( ̄ー ̄)v- ……本作のレビューでよく書かれ、私もそう思うんですが、このオペラ場面では歌詞が字幕で流れないんですね。


それはとても勿体ない。せっかく「魔女の予言、ダンカン王の亡霊、罪悪感から精神に異常をきたすマクベス夫人」といったホラー的な『マクベス』を題材にしてるのに、分かりやすい劇中劇になってない……


( ̄ー ̄)v- たぶん、イタリア人のダリオ・アルジェント御大からすれば「オペラの予備知識はあって当然」なんじゃないかしら。いちいち説明しないだけで、題材に『マクベス』を持ってきたのはそれなりの意味があるんだろう。。。


セットから察するに、足元に死体役が横たわり、拳銃を掲げて歌い上げるのは亡命貴族マクダフの一族郎党を粛清した辺りなんじゃないかしら。マクベス夫人はまだ狂ってない、不吉な髑髏に見下ろされながら「もう邪魔者はいない」と凱歌を上げてるトコなんじゃ。


( ̄∀ ̄*) ……ステキよ、ベティ。


テレビで生中継されているようで、ベティと同じアパートに住む小さな女の子が嬉しそうにテレビに囁いている。また別の場所では、事故で出演できなかったプリマドンナのマーラさんが激おこでした。


「この小娘! 絶対に許さないわ!!」


やっと映ったと思ったら足だけかい。ああ、女なら「この小娘!」「この泥棒猫!」は一度は言ってみたいよね……えっ、そうでもない?


最上階で裏方さんは血の海に倒れ、黒革手袋は双眼鏡をバルコニーに置き直す。血にまみれた双眼鏡がまるで意志のある何かのように、堂々と歌い切るベティを最後まで見つめます。



歌い切った。
ここに新しい歌姫が誕生した。ベティは渾身のガッツポーズで超高音のアリアを締め、とどろくような拍手と喝采に包まれます。