(; ̄○ ̄) ……tre、due、uno!


「白鳥は水面下で必死こいて水を掻く」のたとえの通り、舞台裏ではスタッフも出演者も大忙し。曲の切れ目を秒単位でカウントするのは、助監督でベティの彼氏のステファノ君です。


(; ̄○ ̄)/ ……そうじゃない、こうして被るんだ。

ヾ( ̄∀ ̄;) 落ち着いてね、あなたなら出来るわ!


舞台の袖では、ベティが衣装さんに最後のチェックを受けつつ激励されている。舞台裏には大勢のスタッフが集まって、幕合いに大道具を取り替えるためにスタンバってます。これは天下の国立歌劇場でのオペラ公演。プロ中のプロが集っているし、失敗は絶対に許されない……


観客席には着飾った紳士淑女や評論家が勢揃い。西洋では評論家も手厳しく、「頑張ったから良い」みたいな優しい評価は存在しない。鑑賞に耐え、それ以上に「完成されているか否か」という厳しい世界です。


(ノ△T)v- こんなガチ勝負の舞台に、残り1時間でデビューさせてやるなよ。。。


それでも承諾した以上、ベティに逃げ場はない。刻々と出番が迫る中、誰も知らないところで何かが始まります。


……カメラが舐めるように赤絨毯の階段を上り、観客は既に場内にいる無人の通路を進みます。


誰かがゆっくりと上階を目指してる。姿は映らず、映るのは赤絨毯の通路だけ。謎の人物は最上階に到達し、黒い革手袋をはめた手をバルコニーにそっと載せました。


……双眼鏡?



手元しか映らない。黒い革手袋をはめた手がいったん引っ込み、やけに高性能そうなオペラグラスをバルコニーに置く。そのはるか眼下についに、ベティが姿を現しました。