冒頭のここは好きな場面なので、ちょいと載せ。


( ̄ー ̄)v- オペラの舞台に本物の烏をたくさん使うオープニングに「マジで?」と驚かされた後、カメラが怒って出て行こうとするプリマドンナの目線になるのが面白い。


最初は烏の目のクローズアップ。彼女は小道具にナマ烏を使う演出を生理的に受けつけず、ガアガア声と真っ黒い目に我慢ができない。でも烏はそんなのお構い無しなワケで、無機質な烏の目は「苛立つプリマドンナの映し鏡」なんすね。


舞台上からは演出家や他の出演者やスタッフが、そしてオーケストラボックスからは指揮者や楽団員たちが「やれやれ」って表情でこちらを眺めてる。プリマドンナの姿を映さなくても、彼女が疎外感や屈辱(どうして誰も私に気を遣わないの?)にうち震えてるのが分かる。


( ̄ー ̄)v- プリマドンナの主観的映像(POV)みたいに見えるけど、違うんすね。場の雰囲気だけでなく、彼女は最初っから、物語そのものから除け者にされている……


劇場を出て車に轢かれる時くらい顔が映るかと思ったけど、あまりにもあっけなくキキィー、ドン! すぐに画面は劇場内に戻り、支配人の声がのどかに響きます。


( ̄○ ̄) 今、外でマーラが車にはねられた。


( ̄○ ̄)( ̄ー ̄)( ̄○ ̄)( ̄○ ̄)( ̄ー ̄) ……………マジ?


スタッフや楽団員のリアクションは浅く、不運なプリマドンナがおいたわしくなるレベル。けれども開演は明日あさってというレベルではなく、すぐに代役が選出されました。


♪ジリリーン!


p( ̄○ ̄*) もしもし?


居心地の良さそうなアパートの自室でくつろいでたヒロインが、かかってきた電話に顔をしかめます。


「おめでとうベティ。今夜『マクベス』でデビューだ」


p( ̄○ ̄;) ……誰? 冗談はやめて。


男の声が低く囁き、通話が切れる。オペラ歌手の卵のヒロインは受話器を置くと、視線を感じて振り返ります。


………ユラリ。



壁には格子の嵌まった通気窓があり、そこに黒い影が一瞬よぎった。ヒロインは思わず息を飲みますが、そこで玄関のチャイムが鳴って我に返ります。