ルイーズにしてみたら、「ギリギリで別れればいい」と思ったかもしれない。彼女は最後の1日をナポリで過ごしたいと話します。


( ̄○ ̄*) ……新しい体になるとね、その度に新しい身分証を用意しなきゃならないの。ゾッとする作業よ?


日が暮れた道路に車を走らせるエヴァン君に、助手席で「不死者の苦労」を語るルイーズ。大昔ならアバウトで済んだけど、最近は何かと大変みたいです。


(* ̄○ ̄) あなたはアレを見たのに、なぜ私と一緒にいるの?


夜が明けてナポリの海辺に並んで座り、「いや何故ってあんた……」な疑問を口にするルイーズ。かつて打ち明けて飛び逃げた男性もいたかもしれない。長い長い不死生活を続けるうちに、ルイーズにはエヴァン君の気持ちは理解不能なモノになっていました。


ぱたぱたぱた。


岩場でエヴァン君とキスを交わすルイーズの背後から、ご立派な触手がだらんと垂れてぱたぱた動いてる。“出産”の近いルイーズは、もはや気を抜くと何が出るか分からなくなっている……


ヾ( ̄∀ ̄*) この教会、来るのは落成日以来なの!


そう言って、めちゃくちゃ古い大きな教会に入るルイーズ。2人は信徒席に並んで座り、礼拝堂の荘厳な装飾をじっと見つめます。


(; ̄○ ̄)/ これらの意味は分かる?


(* ̄○ ̄) 私は科学者なのよ。こっち方面はダメ。


ルイーズは「でも教会建築は美しいし、ミサも好きよ」と呟く。長生きしてる彼女ならいろいろ詳しいかと思ったエヴァン君は、ちょっとガッカリします。


( ̄○ ̄;) 長生きでも、何でも知ってる訳じゃないんだな。


(* ̄ー ̄) だって神様って、しょっちゅう変わるんですもの。


地中海沿岸ではギリシャ神話の神様が幅を利かせたり、ローマ神話の神様と融合したり、その後でキリスト教が広まったり。そらぁリアルタイムで推移に触れてたら、ワケ分からなくなるよなぁ。


( ̄ー ̄;) ……そう言えばダイオウイカも、昔は神話の怪物だったな。


(* ̄○ ̄) まだ私を化け物だって? あなたは狭い知識だけで私を判断するのね。


ルイーズは繰り返し、「説明できない事がぜんぶ超常現象とは限らないわ」と語ります。


(* ̄○ ̄) 大昔、恐水症やポルフィリン症の人は吸血鬼だと思われた。伝説に科学が追いついていなかったからよ。


(* ̄○ ̄) もし私の存在が超常現象なら、何の説明も………


ああ、自分で「完全に解明した」とは思ってないんだな。今の時点で分かったのはここまでだと考えてるんだろう。ルイーズはちょっと押し黙り、エヴァン君の肩に頭を持たせかけます。


( ̄∀ ̄;) ……でも、未知への恐れは、美しい物語を生むよ。


�( ̄∀ ̄;) ……!!


優しくそう囁いたエヴァン君が固まります。うわぁ、可愛らしくもたれかかったルイーズの顔が半分どえらいコトに………


( ̄○ ̄;) 注射器は?


(;Φд ̄) 私、変になってる?


( ̄○ ̄;) ちょっとだけね。


他にも礼拝に来てる人がいる。エヴァン君はルイーズがバッグをかき回し、注射器を取り出す間、ハラハラと辺りを見回します。


ヾ(;Φд ̄) そう言えば昔、1760年代のプロイセンで夜中に墓地に通りかかった時、墓泥棒が「動く死体」にビビって逃げてたわ。


ヾ(Φд ̄;) 土葬の死体が腐敗して、体内に溜まったガスのせいよ。でも、そんな知識なかったから、アレは怖かったわね。


どうやら女心で(公衆の場でメイク崩れを指摘されて焦ってる状態)、とめどなく喋りながら注射器を腕に当てるルイーズ。


ヾ(Φд ̄;) その後周りから「年をとらない」って言われてイギリスに逃げて、そこから渡ったフランスでは、癇癪持ちの女たちが魔女狩りに遭ってたわ。


ヒステリーはフロイト先生とかが治療の対象とするまでは、世間からは迷信バリバリ。日本の狐憑きと似たようなものでした。


(; ̄○ ̄)v- 2000年も生きてると、迷信が解明される過程もリアルタイムで学べるのね。羨ましいような味気ないような。。。


聞いてるエヴァン君はそれどころじゃなく、「早くしてくれ!」状態。ルイーズが注射を射ち終えると、彼は彼女の手を引いてそそくさと席を立ちます。


(; ゜д ゜) …………………………。


(; ̄○ ̄) どうしたね、お前?


あああやっぱり見られてた。少し前の列にいた老夫妻の奥さんが茫然と口を開け、旦那さんにぼんやりと答えます。


(; ゜д ゜) ……ゾンビがヤクを射ってた。


(; ̄д ̄) ………。



ヤクですか奥さん、なかなかアレなお言葉遣い。旦那さんは「神も仏もない」って沈痛な面持ちでうなだれます。


何かワケありっぽいけど、礼拝に来て完全に裏目に出てるでしょコレ。。。