実際に雪男を目撃した登山家として、角幡氏が最初に話を聞いたのは小西浩文氏。1962年石川県生まれで15歳から登山を始め、ヒマラヤ8000m峰全14座の無酸素登頂を目指し、現在シシャパンマ、ブロード・ピーク、ガッシャーブルムⅠ・Ⅱ峰、チョ・オユー、ダウラギリⅠ峰の6座登頂を果たした方です。


-v( ̄○ ̄;) あら素敵。検索したら『月刊 秘伝』という雑誌がヒットして何事かと思ったら、自己鍛錬に丹田呼吸法を活用しておられるようで、「鍛えるべきは筋力よりも腹力」と説く著書もあり。


現在 無酸素での8000m峰6座登頂は日本人最高記録。ご自身でイエティ目撃も含む登山録を書かれてますが、ぶっちゃけ語り口がストイックで熱い。求道者タイプの登山家という印象です。
(現代社会を無酸素登山に喩える著書もあり。そう来るか)


著者の角幡氏は小西氏には面識があり、快く取材を引き受けてもらえました。


( ̄○ ̄) 2002年の10月でしたね。エヴェレストの麓の、ネパール・クンブ地方の山奥にあるチャロックゴンパってお寺に滞在していた時の事です。


小西氏は知り合いのシェルパと共にアイランドピーク(6189m)に登った後、クンブ地方では修行場として有名なそのお寺に向かい、行を営むことにしたそうです。


お寺は標高4000mの山の中腹にあり、周囲は広い針葉樹林の森。お寺には60歳くらいの尼僧と17歳のラマ僧(七代目住職)、そして獰猛な番犬しかおらず、小西氏はお寺の脇にテントを張って、裏山(標高5000m以上)を駆け上るトレーニングや、座禅や滝行に明け暮れます。


(; ̄ー ̄)v- ……凄い人だな。


雪男の話は、お寺に着いた時から住職のラマ僧から聞かされました。「雪が降るとイエティが来る」「夏はこの寺よりも高い場所に棲んでるが、冬は標高の低い所に下りてくる」等々……


( ̄○ ̄) 寺の周りの岩場には、広さ二畳くらいの洞穴みたいな修行場が3ヶ所あるんですが、どこも入口は木の格子で塞がれていて、鍵がないと開けられないんですよ。


瞑想所がなぜそんな造りになってるのかを尋ねると、住職は「瞑想中にイエティに襲われるのを防ぐためです」と答えたそう。


ヾ( ̄○ ̄) もちろん「またバカなこと言ってるよ」と思いました。それまでにもシェルパから、何度も「イエティが出る」と言われてましたし……だから、まったく信じてませんでしたが。


最初の異変は4~5日目。お寺で夕食を済ませた小西氏は、テントに戻ろうと外に出た時に、「ヒュイッ!」という何かの鳴き声を聞いて立ちすくみます。


奇妙で甲高い鳴き声だった。それは右手の山の方から響いてきて、まるで空気を切り裂くような不気味な声でした。
小西氏は背筋が寒くなり、鳴き声がした方向をヘッドランプで照らしますが、すると再び「ヒュイッ!」という鳴き声が辺りに響きます。


( ̄○ ̄) ……とにかく、聞いたことのない鳴き声だった。恐竜の時代に首が長くて嘴(くちばし)の突き出した翼竜っていたじゃないですか。俺の中ではそのイメージ。「こんな声を出す動物がいるのか?」と思いました。


類人猿や熊でなく鳥、しかも翼竜をイメージしたってのが興味深いですね。そうこうするうちに鳴き声を聞いた住職と、同行していたシェルパが寺から飛び出してきます。


(; ̄□ ̄) イエティだ!


そう叫ぶ住職に、小西氏は「鳥じゃないのか」と尋ねます。


(; ̄□ ̄) 夜に鳥は鳴きません! ヘッドランプを消してください、イエティが来てしまいます!


……明かりに寄ってくる? それは火も恐れないということか。虫ならともかく野生動物が?


お寺にとっては緊急事態らしく、本堂では尼僧が激しく太鼓を叩き始める。すると鳴き声は止んだそうです。


実際に目撃したのは、それからさらに4~5日後。朝からやけにお寺の周りが静まり返り、同行シェルパは村に下りていた為、お寺には住職と尼僧と小西氏しかいませんでした。


午後7時頃に夕食を終え、テントで寝袋にくるまって本を読んでたら、突然にお寺の番犬が吠え始める。最初は「シカかヤクでも敷地に入ってきたのかな」と思ったが、番犬は1時間経っても鳴き止まない。小西氏は午後10時過ぎまで我慢しますが、犬の鳴き声が絶叫のようになってきて「これはおかしい」と思って起き上がりますが……


バシッ!!
バシッ!!


(; ゜Д ゜) !!??


これはホラー映画的展開、いきなり何者かが、外からテントを叩きます。


(; ゜□ ゜) 雪男だ……


小西氏はそう確信し、何者かの気配が消えてから、お寺で寝かせてもらいます。でも寝る前にトイレに行きたくなって、やむなくもう一度外に出る。するとさっきまで猛烈に吠えまくっていた番犬が、やけに心細げに寄ってくる。


(; ̄○ ̄) ……俺になついてなかったのに、一体どうしたんだ?


そして立ち小便を済ませた時、ふと、左側に妙な気配が。


(; ゜Д ゜) ………………………………。


いた。


横から「何者か」が、ぬうっと無言で現れた。それは小西氏の隣に立つ木の陰から、まるで様子を窺うように上半身を傾けてこちらをガン見してました。


距離にしてわずか1mくらい。番犬はガン逃げし、小西氏も思わず後ずさる。するとその何者かは木の陰に体を引っ込め、見えなくなりました。


(; ゜Д ゜) …………………………エ、


(; ゜□ ゜) エイヤーーーー!! エイシャーーーーーーーーー!!!


我に返って恐怖心を打ち消すために怒号を発すると、一度は逃げた番犬が戻ってきて「何者か」を追うように森に駆け込む。小西氏がお寺に戻ると、同じ部屋で寝ていた住職はお経のような言葉をぶつぶつ唱えるばかりでした。


当然ながら、インタビュアーが一番気になるのは、その「何者か」の外見。それを尋ねる角幡氏に、小西氏は「辺りがガスってたから、見えたのは輪郭だけ」と答えます。


( ̄○ ̄) 真っ黒にしか見えなかった。たぶん、見ていたのは3秒くらいだったと思います。


( ̄○ ̄) 身長は俺と同じくらいだったから、170~175cm。輪郭は人間みたいに頭が肩から突き出したようなのじゃなくて、ゴリラみたいになだらかな三角形の山だった。


( ̄○ ̄) そして肩幅が1mくらいありました。クマという事はないです。クマ程度でチベットの犬は怯えないし、クマの臭いはしなかった。


小西氏は「ゴリラそのものか、ゴリラに近い生き物だと思ってる」と語り、角幡氏はなおも冷静な疑問をぶつけます。


( ̄○ ̄;) ……舞台立ては完璧ですよね。怯えるラマ僧、濃い霧、吠える犬……


( ̄○ ̄;) そんな状況下で、視界のきかない暗闇に何かが現れた。その瞬間に、場の雰囲気と小西さんがそれまでに蓄積した「雪男の話」がない交ぜになって“雪男を見た”になった可能性もあるんじゃあ?


それを聞いた小西氏は笑い、こんなことを言います。


( ̄∀ ̄) 見たことがない人は、必ずそう聞くんですよ。


( ̄∀ ̄) 前提が違うんです。いるもいないも、実際に見たんですから……普通の人は、それが当たり前ですけど、「そんなものはいない」と思っている訳です。しかし、俺やチャロックゴンパのラマ僧とか尼僧は感覚が違う。いるというのが前提だから。


安定感あるわぁ。
惚れてまうやんけ。。。


小西氏は翌年と翌々年もチャロックゴンパを訪れましたが、住職からは「イエティが現れなくなった」と聞いたそうです。


( ̄○ ̄) イエティは移動する性質を持っているのか、あるいは死んだのかもしれませんね。



何も構えたところがなく、見たものを率直に語る小西氏が2002年にチャロックゴンパに行ったのは、奥さんが亡くなられた悲しみや苦しみに耐えかねた為だったそう。


何かこう、暗闇からヌッと現れたイエティが、そういった辛さを持ち去ってくれたのならいいですよね。