↑まあ何が怖いって、公式PVでもライブ動画でも、YouTubeやニコニコで視聴してて不意にフリーズした時のケイト姐さんの怖さはガチ。


( ̄ー ̄)v- ハマーが作ったとしか思えない「棺桶から出てきたキャシーが古城で踊ります」PVもあります、ケイト・ブッシュの『嵐が丘』(Wuthering Height)。


エミリー・ブロンテの大河昼メロ小説『嵐が丘』をテーマにした曲で、さんまさんの『恋のからさわぎ』のオープニング曲だったから、イントロを聴けば分かる方は多いかと。


♪Out on the wiley,windy moors
♪We'd roll and fall in green

(風の吹き荒れるあの荒野で、俺たちは緑の繁みにもつれ合い転げ落ちた)

♪You had a temper,
♪like me jealousy
♪Too hot,too greedy

(あんたは癇癪持ち 俺は嫉妬深い どっちも血の気が多くて苛烈すぎた)


( ̄ー ̄)v- 原作の『嵐が丘』は、田舎を訪れた男性が縁あって家を借り、かつてこの地で繰り広げられた壮絶な恋愛譚を聞かされるというお話。


名家のご当主がヒースクリフという孤児を引き取り、彼は他の子供や大人たちには蔑まれるが、令嬢のキャサリンとは親密になる。


キャサリンは相当なツンデレで、同じく気性激しいヒースクリフとは剛の拳のぶつけ合いみたいな経緯を経て惹かれ合いますが、キャサリンは別の名家の御曹司にプロポーズされると、そちらと結婚してしまいます。


(; ̄○ ̄)d だってあなたは身分が低いもの!

b( ̄□ ̄;) なんだその理由はアアアアア!?


ここから始まるのが「何故そこまでもつれる」としか言いようのない壮大な愛憎劇。キャサリンの裏切りに激上したヒースクリフは出奔し、階級社会・英国で気合いで裕福な紳士にまで登りつめ、今や人妻となったキャサリンが暮らす《嵐が丘》に戻って来ます。


パーン!\( ̄□ ̄;) ジェントルマンになって戻って来たぞこのクソアマ!!

(; ̄□ ̄) 何ですってぇえええええ!?


でも、いたずらにもつれにもつれる『渡る世間に鬼ばかり』みたいに、どっちもワケ分かんなくなっている。いや、ヒースクリフは復讐心からキャサリンちとその婿んちを乗っとって、そのとばっちりは子の代にも及ぶ。そしてついに意地を張り合ったまま、キャサリンは亡き人になってしまいます。


( ̄ー ̄)v- そのキャサリンが、もはやすべてに張りを失ったヒースクリフの前に死霊となってやって来る。。。


♪Heathcliff,its me,Cathy come home
♪I'm so cold,let me in-a-your window


(* ゜∀ ゜) ヒースクリフ、私よ、キャシーが帰って来たのよ!

(* ゜∀ ゜) とてもとても寒いの。窓を開けて中に入れて!


『恋のからさわぎ』のOP部分だけだと可愛らしい歌声ですが、よくよく聴くとかなりヤンデレな、「死霊になって吹っ切れたわ!」感が満載。


伸びやかな高音ですが、健康的ではない。さらにパントマイムの巨匠リンゼイ・ケンプの元でスキルを磨いたケイト姐さんの歌い踊りっぷりと併せて視聴すると、「これはどこのバンシー(泣き叫んでるのを見ると死者が出る妖精)だ?」とひそかに背筋が冷えます。


( ̄ー ̄)v- なかなか深いチョイスだったんですね、『恋のからさわぎ』には。


ケイト・ブッシュ姐さんは名文学『嵐が丘』をテレビドラマ化したものを見てこの曲を作ったそうですが、もう死者になって色々吹っ切れたキャサリン嬢のテンション爆高ぶり、歓喜っぷりを余すところなく表現しとります。


-v( ̄ー ̄;) でもねコレ、「ヒースクリフ逃げて超逃げて」な状態なんすよね。キャサリン嬢、がっつり殺しに来とります。


(* ゜∀ ゜)人 あなたの魂を奪い去りたいの、どうか私のモノになって。

(* ゜∀ ゜)人 わかるでしょ? 私よ、キャシーが帰って来たのよ!


( ̄ー ̄)v- もう牡丹灯籠のお露さんとか、四谷怪談のお岩さまと変わらん。。。


原作では復讐を果たした勝利者であるはずのヒースクリフは、彼にしか見えないキャサリンの幻に苦しみ、やがて飲食しないようになって謎の死を遂げます。老いた彼は「この世は地獄だ」と語っていたらしい……


一般にはこの『嵐が丘』をテーマにしたケイト姐さんの歌は「しがらみから解放されたキャサリンの亡霊が一途にヒースクリフを求める歌」となってますが、別の解釈もあり、「老いたヒースクリフの妄想」とも取れるのだとか。


( ̄ー ̄)v- 確かに歌い出しの一人称を「俺」にした方が分かりやすい。


前半はまだ無垢だった頃の自分とキャサリンを懐かしみ、理性をもって記憶を振り返る。しかし中盤の「Wuthering,wuthering,wuthering…」という呪文めいた繰り返しがスイッチになり、老いたヒースクリフの脳内にひたすら若く美しく、ただ自分を求めて止まないキャサリンが現れる。


(* ゜∀ ゜) ヒースクリフ!私よ、キャシーが帰って来たのよ!


死んでしまった女。もういない女ほど完璧で、タチの悪い女はいない。
元はと言えば貴女のツンデレが……いや、もうヒースクリフにとってはどうでもいいんだろう。


( ̄○ ̄;) この世は地獄だ。


ヒースクリフが死んだ後、風の強い荒れ野の中で手と手を取り合う2人がいたとか、語り部の男が屋敷でまだ少女の姿のキャサリンを見たとか、イメージの割にゴシックホラーぽいんですよね。『嵐が丘』って。


( ̄ー ̄)v- なんでこんなん書いたかと言うと、英国屈指のコメディ集団モンティ・パイソンの『手旗信号で嵐が丘』ってコントを観たから。


( ̄ー ̄)v- 会話がすべて手旗信号。大真面目に何してんすか英国人。


それ繋がりでケイト・ブッシュ姐さんの曲が浮かびました。本当に、歌はともかくダンスは余人に真似ができません。「キャシーが楽しそうで何よりです」としか言いようがない。


ちょうど『日本の幽霊』って本を読みまして、国文学者の池田弥三郎氏という方の著書なんですが、自分を捨てた男をとり殺しに来る女幽霊のくだりが興味深くて。


( ̄ー ̄)v- 道が分かんないとか、生霊で自覚がないとか、捨てた男でなく愛人の女を狙うとか、なかなかに個性豊か。



キャサリン嬢は直球で来た。
でも、それは男が呼んだだけかもしれない。。。