さみしい予感に、無力なしもべとなっている
まるで少年が打つ太鼓のように不安定なのだ
愛するきみを失ってしまうのでは
このまま私を必要としなくなるのでは
きみの将来、きみが履く靴に
いちいち泥ばかりつけてきた私を
きみがうとましく思っているのなら
それはそれでいいのかもしれない
それなら新しい靴を、新しい土地でお履き
きみの幸福ならそれは私も望むこと
でもこれはただの予感、夜の夢と同じもの
秋か冬かもわからぬ風が運んだ気まぐれ
そんなものに振り回されているというのだから
わが身はどんなに軽いことだろうか
こんな軽々しい肉体に、きみへの愛情も
宿っているとはとても信じがたい
いつからきみは大人しい女となったのか
きみは私の声の変わりを
私の知らぬ土地で聞いてしまったのか
私以外の体に、その肌を許してしまったのか
それともきみの舌は私以外の男に
奪われてしまったのか、それとも奪いにいったのか
きみの口からは何も語られない
ああ、その語られない沈黙こそが
私をこんなにも不安にさせている理由なのです
沈黙が私の胸に決別を言い渡すかのように
とはいえこの胸、燃え盛る炎に生身で焼かれる
痛々しい胸というわけではない
きみの姿が見えないわけでもない
つまり愛が理性を持ち合わせていて
愛は胸から脳へと住みかを移ったもんだから
こうして案外冷静にいられはする
だが、不安なのだ、とても
不安定な夢をみる、何度も
でもこうやって嘆きじみたことを
冷静に語った挙句
いまさらきみを失うことになっても
昔みたいに苦しむことはない
見えない血を過去に吐き
青い空に死んだ月を昇らせることもしない
夜を夜と呼び、朝を朝と呼び
私はありのまま生きていける
愛のために、すなわちきみのために
死を選ぼうとも考えないだろう
いつも通りでいられる
そういつもの調子でおどけていられる
上野の桜を思い出しても
いや、悲しみに悲観することはない
後楽園の水面に
いえ、悔い入ることもしない
私は私で、きみがきみでいられるように
だからいまさらきみを失ったって
どうってことはないはず
目はみるし、鼻は嗅ぐ
手は触れて、耳はきき、口は味わう
こうして詩を書く具合に
五感のなにひとつとして損なわれることはない
恐れもない、なのに不安
ここでひっかかる、なぜ不安なのか
長かった六年を振り返る、思い出せば露の間に
きみという第六感目を失うことがあっても
五感は無傷でいられるがなにかが失われる
それは一体なんだという
私の目は涙で濡れない、そう誓える
しかし泣く、何かが
それは一体なんだという
きみがいない世界で私がみるもの
誰をきみと呼べばいいのか
何を私の中のきみと思えばいいのだろう
ああ、愛する人
私のすべてがきみを愛している
しかしきみが口をふさぐとき
きみの涙が、この部屋の壁を濡らしていく
きみの泣き声が、私を叱責する
遠い日のことまで私を責め立てる
私は不安だ
どうかこの溜め息のわけをきいてくれ
そしてまだきてもいない日々を嘆く
この私を安心させてくれ
私にキスをした
私を愛すると誓ったその口で