第123回レッスン ~左手で喋る~ | 四十路テナライストのヴァイオリン練習部屋

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音楽や楽器とはおよそ縁のないまま四十路を迎えた中年男性がヴァイオリンを習い始めた。
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 前回のレッスンで、先生とのデュオを録音して、音色のわるさに愕然としたところだ。これを何とかしたいというのが、私が設定した今回のレッスン課題だった。
 ラッパで鳴らすファンファーレかチャルメラのような、うまく言えないのだが、耳に刺さるような音色だったので、もっと柔らかくしたい。素人の私が考えたのは、もっと指板よりのところを弾くことだった。しかし、自分の出している音色というのは自分ではなかなかわからないものだ。なにせ耳元でガンガン鳴っているのだ。何メートルか離れて聴いたときにどんな音色に聴こえるのかは、心の耳で想像するしかない。ところが、この心の耳というのは、どんな音色でも自分の気に入った音色に変換してしまうという、実に都合のいい仕組みになっている。やはりレッスンで先生に聴いてもらうしかない。

 レッスンの冒頭、
今日は音色をきれいにしたいです
と先生にお願いする。ところが先生は別の課題を考えておられたようで、細かいところを(といっても、ポイントになるようなところばかりなのだが)見ていきましょう、ということになった。相変わらず、音程が上手くとれていないところ。特にサードポジションの音程だとか、ポジション移動した直後の音が丁寧に弾けていないところとか、最初から弾いて、気になるところで何度も止まって繰り返す、ということをして最後まで行った。自分で言うのもなんだが、だいぶ良くはなっていると思う。それほど時間をかけずに最後まで行けたのだから。

 ここで音色の話をもう一度蒸し返す。私としては、聴いている人にとっての第1印象ともなる最初のところが気になるのだが、「音色」と聞いた先生は95小節目の移弦の激しいところが気になるようで、そこの練習になった。
初めての試みなのだが、私が弾いているところを先生のスマホで撮影するということになった。緊張しないでいつものように、と言われるのだが、これが緊張しないわけがない。私の脳裏には音姫先生のブログにときどき登場されるとのさんがよぎる。たぶん、うちの先生はご存じないと思うのだが。スマホに向かって自己紹介。しかし、ここは軽くスルーされたのでやることがなくなり、弾くしかないようになった。ま、こんなやりとりで緊張は解れたのだが…。
 ここのポイントは弦を押さえつけないこと。肘の高さをしっかり調整して軽く弾く。そんな注意を受けていざ撮影。そしてすぐに試写会となった。音色は捏ねているような感じなのだが、画像で見る限り肘は柔らかく流れるように動いているように見えた。先生によると、肘を上下させることについては、これまで見ていた中でもいちばんいい方だという。ただ、流れるように動くというのは、それがいい訳ではなくて、動かしたら、ピタッピタッ、と止める感じがほしいとのこと。たけど、動かす前の音を弾いたら、その音を最後まで聴かずに動かせとのこと。
むむむ・・・ 

 そんな先生の説明もそっちのけで気になったのが自分の。鏡で見て知ってはいたが、こんな苦しそうな顔していたのか。発表会で聴いている人は目を瞑って聴いているわけではないので、つい顔を見て、自信たっぷりに弾いていると、恰好は堂々としているけど中身が全然だわ、とか、オドオドと弾いていると、このレベルでこの曲弾くのは結構大変ね、とか、音以外のところでいろいろと勝手に考えながら聴くものだ。初々しいカップルのさわやかな感じを出したいのだから、顔もさりげない感じで弾いてみたいものなのだが…
 しかし、先生の反応とくれば「顔作るのは大変です」とのこと。
12人のヴァイオリニストじゃないので、顔はいいです
と早くも課題から除外されてしまった。そうか、高嶋ちさこさんでなくてよかった。

 ここでやっと、今日のレッスンの最大課題と自分で設定していた、最初のフレーズの音色の話になった。「なんかファンファーレのような感じなので、もっと普通に弾きたいんです」と言ってみる。先生はいくつかお手本を示してくださるんだけど、どれもぴったり来ない。「もっと牧歌的にですか」それもなんとなく違う。バロックの場合は、音量があまり出ないので、弦を擦る音をあとから足していくというより、最初に出した音の響きを残して聴かせるそうだ。そんな話を聞くと「かっちょえぇ」と思うのだが、先生にお手本を弾いてもらうと、それもちょっと違う。いや、あるいは極端すぎただけで、私がそれを目指してやればちょうどいい感じになるのかもしれないのだが。
普通に弾きたいんです
と、おそらく理解不能な言葉を繰り返すばかりの私。耳に刺さらないような響きで弾きたいです。ラッパの音じゃなくて木の音を出したい

先生の結論
左手でもっと喋りましょう


 左手でしっかり喋れていないのを右手で補おうとしているので、結果的に押さえつけるようなことになっている。弦のどこで音を出すかはあまり気にしなくてもいい。バロックで響きを残すためにわざと指板の方に流す弾き方もあるが、流れたまま戻ってこれない癖がるので、そこは注意して、比較的コマ寄りのところを弾く、流れないように腕は前に出す。
あとは音程
 音程を外すと響きがなくなるので、音程をしっかり合わせることで楽器を響かせる。響かないのを無理に響かせようとすると、弦を押さえつけることになってしまう。言われてみればそのとおり。あと、身体が動いているとうまくいかないので、身体を揺らさない。踊らない。肘と肩を柔らかく使う。これも思うように響かないのを身体全体で何とかしようとしている査証かもしれない。

ということを踏まえて、今回も音源をアップ。


 前回のレッスンの時の録音に比べると、音色はだいぶ改善されたように思う。イメージ通りかというとまだちょっとどうなのかという感じはあるけれど、方向性はこれかな。先生曰く、左手をハラハラハラとなんとなく押さえていても音が出るけれと、そうではなくて、奥の奥まで押さえる感じ。押さえこむときに指が震えて少しビブラートっぽくなるので音色が柔らかくなる
音色はいまのでよかったので、次は曲想を付けましょう、ということになった。

  • 後半はAllegroの雰囲気を出すために 軽快な感じで弾きましょう、ということだった。そういわれると、短絡的に「速く」ということかと思うのだが、そうではなく、ポンポンポンと音を短くとっていくことで軽やかに聴かせる。テヌートでターターターとつなぐのではない。

  • 40小節目は、レッドシラーソ、とソでフレーズが終わるのだけれど、その前のラまでが3ポジで1ポジに帰った後にソを弾くので、ソが捨てられがち。もっとたっぷり。

  • 59小節目、めずらしく四分音符が並んでいるので、テヌートで繋ぐのではなく、ひとつずつをポンポンポンと置いていく感じ。

  • 67小節目、八分音符を弾き終わった後、ピタッと弦の上で弓を止める。浮かさない。

  • 95小節目から、次の音を準備してから音を出すようにしようと思っていたのだが、そうじゃなくて、前の音が出たか出ないかぐらいに次の音の準備をする。前へ前へ出る感じ。鼻歌のように軽く、って仰るのだけれど…。

  • トリルで遅れないようにというご指摘を何箇所か。

ということで、牛の歩みだけれど少しずつは良くなっているのではないかと思う。