「………るわ……」
「…………ても、いいんじゃないか…」
どちらも低く話すので、話の内容は理解できない。
どちらも淡々と話すので、話題の重要性も話し手の感情も読み取れない。
時折耳に入る言葉は意味を持たないただの音となり、私の眠りを妨げる。
もう、放っておいてくれ。
久し振りの、思い出せない位久し振りの深い眠りを邪魔しないでくれ。
私は今、夢みる事にすら疲れ果て、やっと夢みる事なく眠っている。
「それを彼が望むかしら?」
前後の脈絡なく、唐突に響く彼女の声。
ああ、望むとも。
静かに眠る事こそ私の唯一の望み。
目覚めればまた、知らない世界で知らない自分と、居場所もなく不安定な…
いや、思い出したのだ。
私は…私の名は
「バッシュ、起きてるんだろ」
「いやね、狸寝入りで人の話を聞いていたのかしら?」
慌てて飛び起きると身体の傷が痛んだが、気にせず寝たふりなどしていない事を告げる。
「本当だ。ぼんやりとしていたが、眠っているつもりだった。
盗み聞きなどしていない」
「将軍様は、よっぽどフランが怖いと見える」
バルフレアが笑いながら、私の額に手を当て、気分はどうだと聞いてくる。
「ああ、これまでになくすっきりしている」
「そのようだな、まったく…心配したぜ」
「覚えていないでしょ。
私はバッシュだ宣言の後、まるで何かに取り憑かれた様にダルマスカの事、帝国の事、
ランディスの事を話し始めたと思ったら…急に黙って寝てしまったのよ」
「話した…とは?」
「喋る百科事典みたいだったぜ。
歴史や産業、主な都市や地形風景。そして国同士の力関係利害関係…」
「そうか……やはり帝国との戦は避けられないのだろうか…」
それまでの和やかな笑顔は掻き消えて、二人は顔を見合わせ黙ってしまった。
「まぁ、その内そんな事も思い出すだろ。
オレ達他人の口から聞くより、思い出せ。
それがあんたにとっての真実だ」
その慰めるような口調で、私の記憶はまだまだ穴だらけなのだと実感した。
バッシュと呼ばれる度に、名を取り戻した喜びに、気分が高揚したのも2,3日で、
結局今までと何も変わらない日々が無為に流れて行く。
いくばくかの記憶が戻っても、私の居場所は定まらない。
どこで何をしていれば良いのか…ここでどう過ごして良いのかわからない。
「わからない、んじゃなくて覚えてない、だろ。
全然違う、焦るな。
だいたいまだ身体が出来ていない。まず右手を治せ」
身体と記憶のリハビリにと、家の外で過ごす事が多くなり、
自然バルフレアと二人きりになる事が、今まで以上に増えた。
人の集まる場所…どころか人がいる可能性が少しでもある場所は無言のうちに避けた。
バルフレアがいつも私の右を歩くのが不思議だったが、一度モンスターの群れに囲まれた時に気づく。
私の右手の傷がまだ癒えず、動きが鈍いのでこちらをカバーしてくれているのだ。
細やかな気配りが、面映ゆく有難い。
「こうして、一緒に良く歩いたのだろうか、その、我々二人は」
さぁね、と素っ気ない。
「色々話してくれると助かるのだが…」
「前にも言ったろう。
思い出さない事は思い出したくない事。
オレは…思い出したくない男なんじゃないか」
「そんなはずはない」
歩く彼を止めようと、伸ばす右手は動きが鈍く間に合わない。
すたすたと先を行く彼に小走りで追いつき、
左手で、肩を掴む。見た眼の印象より細い感触に胸を突かれる。
「そんな事を言わないでくれ」
顔を覗き込むと、バルフレアは目じりを下げ困ったような笑いを浮かべていた。
そっと私の胸を押し返し、距離を取る。そのまま今度はゆっくりと歩き出す。
私の右横に静かに佇み、時々黙ってこちらに向けられる視線。
何かをせねばと焦るが、だ私はが何をすればいい。
( NEW )
すまんね短文。読み返しなし!時間切れだすもう寝なきゃ…。
しかも何も起こらず心理…って程じゃないが…気持ちだけ書いて、
書く方は楽しいが…すまない…な、回になっちゃった。
ま、今までも平凡だったが今後もより平凡な展開になります。
世界にごくごく僅かな砂一粒程の選ばれし読者様が、ご想像通り。すまん。
もうばればれですがな…。
週末にかけてちょと忙しいので、なんか書く!と思っただけの本日の激へぼ文。でございます。