ああ言えばこう言う気の強い、気の合わない部下と、

ただその居眠りをする弛緩した背中を偶然眼にして、

無防備に開かれた唇に誘惑されて、

なんだかかんだか、我ながら不自然な話だとは思うが付き合いを始めてしまった。


職場での彼は相変わらずの反逆児振り。

人の意見は聞かないわ、人の思惑は無視するわ、人の感情は逆なでするわで、

わたしの抱えるプロジェクトは…何故か好調に進んでいる。

お蔭で毎日忙しく、彼に逢う暇が殆どない。


もっと逢いたい。

わたしは彼の勤務態度にばかり詳しくて、怒っている顔しか見た事がない。

会議の席で意見を戦わせながら、そうではないと内心思う。

一緒に悪天候を嘆いたり、本を選んだりTVを見て笑ったり、黙ったまま音楽を聴いたりしたい。

一つベッドで眠りたい。

万華鏡の様にくるくると変わるだろう彼の表情を、わたしは隣で見ていて飽きないだろう。

そんな時間を過ごしながら、彼の事を少しずつでもいい、知りたい。

一番効率が良くかつ、短時間で成果が上がる手段を検討する。


会議中、皆の前で彼の乱れた前髪をかき上げている自分を発見した時点で決心し、

その数分後には当人に提案、即決。

わたし達は一緒に暮らす事になった。


その夜のうちに、彼はわたしの家に来た。

途中コンビニで下着と歯ブラシを買い込んで、ずかずかと部屋に上り込み、

ぐるっと部屋を見回すと、ここからここまでオレの陣地と勝手に宣言。

これから一か月、わたしの家で過ごすと言う。


「一か月?短い!その後はどうするのか?」

「そりゃ、その間に決めればいい。

一包みのコンビニのサンドイッチとたった1回のキスで、どこまで人を愛せるか、

一か月もあればわかるだろうよ」

「では今は?」

「好きかどうか、よくわからない。

そっちはどうだ?オレの事好きか?」

「正直、この感情がなんなのかわからん」

「だろ?」

「だな」

「でもオレは逢いたいと思ってたし、一緒に暮らすのは最上の解決策だと思う」

「キミがわたしの提案を文句一つ言わずに受け入れるのは初めてだな。

でも嬉しいよ。わたしも逢いたかったし、キミをもっと知りたい」

「知れば知るほど、好きになるぜ」

「そうであれば良いと思っている」

「オレも」

胸に抱えたクッションに顎を埋め、少々眠そうな翠の瞳をこちらに向ける彼は会議の時とは別人だ。

「取りあえず、今日はもう休もう。

明日も早いぞ、知っていると思うが」

こちらが洗面所、このタオルを使ってくれ、と細々した指示に一々こくんと頷いている。

知らなかった…こんな素直な面があったとは。

これから毎日、新しい彼を発見するたびに胸がときめくのかと思うと少し口惜しい。


今日はこっちと言うのでソファに毛布を運んでやる。

おやすみのキスはしてもいいと偉そうなお許しが出たので、苦笑を堪えつつ頬にキスをする。

去り際に、

「一つ約束」

と言うのでどんな難題を吹っかけてくるかと思ったら、

「家では仕事はなし、仕事の話もなし」だった。

お安い御用だ、むしろ仕事をしろと言っても無理な気がする。

指切りをねだられ、絡めた小指を離せない。


( NEW )


なるか?シリーズ化。

なるといいなと思う。でもこれで終わってもいいとも思う。だっていつも同じ話だからさ~。


ところで、シリーズとかにするのは、書くのは、決めるのは自分だという事を忘れている。

ついでに…明日も仕事だっちゅうのに忘れて夢中で書いた。

やばし!もう寝なきゃ~。