これは、この顔は、どう見ても泣いている。
翠の瞳を閉じもせず、こちらを睨みながら涙を流すこの男は
どうしてこうも泣き顔だけは、無防備に晒せるのだ。
しかも泣いている原因は、彼の浮気ときているから驚きだ。
もちろん怪しいと思い始めてからは何度も確認したがその度にはぐらかされた。
そのうちにふてぶてしく開き直って、
浮気相手がいかにわたしより優れているかを滔々と述べた。
挙句、わたしが平気な顔をしていると言って
怒り、不貞腐れ、愛されてないんだ別れよっかな、などと口走り、
いい加減にしないかと声を荒げれば、
いい加減がちょうどいいんだよ、だから良い加減って言うんだろ。
小憎らしい科白で勝ち誇った眼を向ける。
美しい翠。その中に幾千もの光を抱えた瞳。
一言尋ねる。
ずっと傍にいていいかと。
誰と何をしようと、それはキミの勝手だ。
それでもわたしはキミの傍から離れずに、ずっとずっとキミを見ていたい。
キミがいつも幸せか、笑っているか、心配でしょうがない。
他の男と一緒の所も見たいのか、と聞いてくる。
ああ、傷つくとわかっていても、見ていた…
ここで唐突に泣き出した。
泣きながら、アンタがかわいそうだと言う。
他の男とメシ食ったり酒飲んだり、ちやほやされて可愛がられて、
使わせた金が愛情のモノサシ、なんて考える男をそこまで好きな、
そんな馬鹿なアンタを想うと泣けてくる。
大泣き。晒す泣き顔、震える声。零れた涙の数は、途中から数え切れなくなった。
泣きたいのはこっちだ…バルフレア。
本気でまだ泣いている頬に迷わず指を伸ばす。
キミは気づいていないのだろうか。
自分の事では決して涙を見せない自分に。
その男がかわいそうだと泣くほどに気にかかり、
その男の目の前で泣けるほど心を許す、
その男を一人想う日まで、
わたしはいくらでも待てるから、好きなだけ泣いてくれていい。
( 2011.10・03 再録 )
恒例となった、素晴らし絵を拝見してのへぼ文。
ウチのばるちゃんは滅多に泣かない。
泣けない。
例えその頬に涙が流れていても、足元にぽとりと涙が零れても、泣いてないと言い張る。
この時も泣いた、けど本人は気づいていないし、このまま眠ってしまって
起きたら…覚えていないと言い張るであろう。