『迎えに来てくんない?』
携帯画面を一瞥した途端、顔が歪む。
己の行動に指図を出すようなメールを許した覚えはない。
そもそもくんない、とはなんだ、くんない、とは。
この場合来てくれない、が正しかろう。
この頭の悪いメールの送信者が、アルバイト中に堂々と携帯電話を取り出している様が一瞬脳裏に浮かんだが、
ふん、と鼻息で吹き飛ばす。
その癖、携帯を畳みパンツのポケットに入れた時点で、足はもう駐車場に向かい始めていた。
馬鹿者が迷子にでもなり捜しに出る羽目になっては却って面倒、という理由で少々急ぐ。
さほど、無理やりだったとは思っていなかったのに、
うぉーすらに強姦された、と本人が言いふらしていると聞いてうっかり
「想いを遂げただけだ」と言い訳をしてしまった。
性欲に負けて押し倒した、などと本当の事を言える訳がない。
それがまた、どう本人の耳に入ったのやら
「ホントにオレに惚れてるのか?」などと皆の前で聞かれ、返答に迷った。
自惚れるな、誰がお前のような尻軽若造を、と言い返せばその瞬間自分は強姦犯となり、
一言ああと答えれば、若造に恋焦がれ我を忘れた身勝手な男になる。
強姦犯と身勝手な男。
その罪の重さは、比べようがない。
腹を括り、なるべく逆の意味に取れるよう「ああ」と喉の奥で唸る。
途端に眼の前の若造は「嘘つくの下手過ぎ」と不機嫌顔になり、
「どう見ても、性欲の捌け口にされたとしか思えない」と絡んできたので
ついつい「うるさい、本気だ。観念して俺と付き合え。」と嘘を重ねてしまった。
鋭そうに見えても所詮浮ついた若造だ。
肝心な処で俺の嘘を見抜けずに、「そこまで好かれてるんならまぁいいか」
などといい加減なセリフとともに、ことんと肩に頭を預けてきた。
寄るなと言っても付いて来る。
触れるなと言っても手を伸ばす。
今更だが貴様の事は遊びだと念を押せば「奇遇だな、オレも遊びなんだ」と笑う。
まったく、ああ言えばこう言うその減らず口、どうすれば閉じる。
試しに好きだと言ってみる。
途端に急に無口になりそっぽを向いた、横顔の薄赤い目元に欲情した。
大人しくなった若造をベッドに引きずり込みながら、なるほど。この手があったかと合点。
黙らせる為に、それだけの為に、時折好きだと口にする事に決めた。
オレも、などしがみついてくる若造の、名を一度だけ呼んでやる。
以下、自分で自分の作品に感想。
いや、あんたそりゃ、好きだちゅーてその度赤くなったばる見て欲情して、ベッドになだれ込んでたら、
ただオレの事本当に好きなんだなーって思われるだけですから。
まぁ好きなんだろうからいいんだけどさ。
誰かに愛されるばるを書きたくなっただけ、のお話でしたー。お粗末。
( 2010・04、20 感想部分も含め再録/本文ちょっと修正 )