空賊と名乗る男が後ろ手で閉めた扉は、確かバッシュの部屋だった。 
丁度良い。 
一度この男には聞いておきたい事がある。
殿下に同行するその真意。 
何を企み何を狙い、何を…見ている。  
時に暗色に沈み、時に金に見紛う光に煌めく瞳は何を求めている。 
問い質そうにも、常にバッシュの影がこの男の後ろに見え隠れして、機会がなかった。 
丁度良い。 
部屋から出しなの空賊の上腕を無言で掴み、そのまま人目につかぬ廊下の奥に引き摺り込む。 
不審気な表情が癪に障るが耐えて、聞きたい事があると前置く。
問われた空賊は何か言い掛けたが急に黙り、眉をしかめしばらく眼を伏せていたが、やおら自分の指先をぺろ、と一舐めした。 
指と薄紅の唇の間から一瞬見えた舌は唇より濃い紅。 
舐めた指先には一本の縮れた金色の毛。 
それがバッシュの一部と理解すると同時に、空賊を掴んでいた腕から力が抜ける。


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