絶望。
あれだけの絶望が今までにあっただろうか。
私は生まれてこの方絶望を感じた事は無い。なんでもパーフェクトに熟してしまう私にとって絶望なんていう言葉は所詮辞書の中にしか存在しない、いわばそれこそトイレの花輪君くらい都市伝説みたいなものだった。
あの時までは。
高校生の時に自由が丘の駅前で、開かれたバッグを逆さにされて中身を散乱させられるという金八先生でしか見れないような事を平然とされても別に虐められていたと思っていなかった私に。
あの時ばかりは絶望の『ぜ』と『つ』と『ぼ』と『う』の部分まで感じた。
とハードルを上げてしまったが、私はパーフェクトな人間なので、少しでも思い通りではない事があると絶望してしまう、か弱い人間だという事を忘れないで頂きたい。
そんな感じでしっかりハードルを下げるという抜かりの無さに自画自賛しつつ書いていこう。
時は遡って1月17日。火曜日だ。
『まずは火曜1、2限のノートか。』
私が1番始めに資料集めに取り組んだのがこの火曜1、2限の授業だった。
この授業は、1~2限の連続授業になっており1教科で4単位と重要なポジションを担っている。バレーボールならリベロといったところか。
しかし私はこの授業に1回しか出た事ないので、ノートはおろかどうやって評価をつけるのかさえ解っていない。
因みにこの授業の評価については後々解る事になるのだが、この授業は物語の終盤でも大活躍する事になるので、ここではまだ詳しくは書かない事にする。
で、今回のミッションは『見ず知らずの人に対してノートを貸してもらう』という事である。
読者の方は察して頂いてると思うが、私は世間話に『福永騎手の最近の馬質ぶり』とか『エヴァスロの最新作が前作に比べて驚くほど合算が軽くなっている事』を出してしまうくらい世間知らずでありコミュニケーション障害をお持ちでいらっしゃるようでありまする。
つまり今回のミッションはそれこそトムクルーズにお任せしたいくらいインポッシブルなのだ。
簡単にいうと無理ゲー。
まだGODで5連続リプレイを引く方が簡単だ。
しかし実は目星を付けている。
あの前の方に座っている、彼女いない歴が年齢を上回っているような時空を超越する冴えなさを醸し出している奴に声をかけよう。
あいつなら俺をわかってくれるだろう。俺を冴えない奴同士として共感を覚えるだろう。
うむ。大丈夫だ。
しかし、見てわかるように俺は心の中で完全にそいつを馬鹿にしていた。
80%以上の心境は『こいつなら余裕で声を掛けられるし、俺のお願いを断れねーだろwwww』みたいな感じだったと思う。
授業後、声をかけた。
『すいませんこの授業のノート貸してもらえませんか?私卒業かかってて危ないんです。もちろんお礼は致しますので。』
『嫌です。』
『・・・・・・・・』
あれ?
聞き間違いかな?
普通、『今ノート持ってない』とか『私の字汚いから』とか『私も授業出てない』等と適当な嘘をついてから、
『他の人あたってください。』
というのが一般的な断り方じゃないのか?
もちろん私もそんな嘘をつかれるのは想定内で、そういう風に断られたら他の人をあたろうと思っていた。
しかし、あろう事か返ってきた言葉は
『嫌です。』
想☆定☆外
その後私は、どう声を掛けたのかも覚えていない。
他の人にも声を掛けたが3人に断られた時点で、私のガラスのハートは粉砕した。
いわばあの時の心境は、
久しぶりに物語を書いて気合い充分だったにも関わらず、競馬予想ばかりしていて普通の読者が離れてしまった為に、存外に久しぶりの物語の反響が薄かったブロガーの心境に似ているかもしれない。
むろんそんなブロガーは自業自得なのだが。
どうしよう。とりあえず家に帰って考えよう。
私はこの伏魔殿から早く抜け出そうと早々に学校を出た。電車に乗って地元に戻ろう。
5分後、私は学校近くのパチンコ屋でツインエンジェル3を打っていた。
『ふざけんな!ふざけんな!ふざけんな!』
とボタンを押す度に言って、行き場の無い怒りを発散していたが、
5千円投資したところで
『チャンス目仕事しろ!』と当たらないスロットに対して怒りを向けていた。
財布の中に万札しか無くなった所ではっとなり、普通に家に帰った。
今思えば、あの時財布の中身は諭吉3枚と野口5枚だったのだが、野口35枚だったら35枚全部使っていたかもしれない。それくらい我を忘れていた。
地元に帰り、いつものように雀荘に行った。
そこで携帯をおもむろにいじっていて、あるサイトを見ていた。
『試験対策掲示板』
ついにやるしかないのか。
私は掲示板に書き込んだ。
『〇〇と〇〇と〇〇と〇〇の授業のノートとレジュメ各一万円で購入します。』
次回『異常なツキ』に続く。