『よし!ここで打てれば俺の野球部3年間後悔はない!!』
最終回2アウトランナー1塁。私が最後のバッターになんてなりたくない。
絶対打ってやる。
ピッチャーが球を投げた・・・・・・!
・・・・・・・・・・・・
私は中学生の時、野球部に所属していた。
小学生の時には野球をやっていなかったが、ただ単純に野球を見るのが好きだったので自分でもやりたいと思い入った。
しかし野球部の練習は辛く、いつも適当に流していたので上手くなるはずもなく、大体2軍暮らし。
何度辞めようと思った事か。
しかし仲間とつるんでいるのが楽しく、何とかやめる一歩手前で踏み止まっていた。
そして最後の大会が始まった。
この大会で負けると引退。つまり、練習に行かなくてよい。
早く負けて欲しかった。
そんな中試合は始まった。
もちろん私はスタメンに入る事はなく、ベンチで応援をしていたが。
試合は順調に進みついに最終回。
スコアは1ー2で負けている。
よし!このまま相手ピッチャーが完璧に抑えてくれれば引退だ!
もちろん、他の部員は勝ちたいと思っている人が多かっただろう。
私は口では『打て!打て!』と言っていたが、心の中で相手Pを猛応援していた。
綻ぶ笑顔を隠すのも必死だ。
すると私の応援が届いたのか、相手Pはランナーを出したものの、
すぐに2アウトにして、残り一人を抑えれば引退という状況になった。
で最後のバッターはY
よし!Yなら余裕で抑えられるぞ!
明日から何しようかな?麻雀するのもいいし、海にも行きたいな、あと
監督『問題児!代打だ!』
プールにも行きたいし、それとそれと・・・・・・・・・・・・
問題児『は?』
本当に『は?』と言ったかもしれない。
それくらい驚いた。
他に人がいるだろ。
俺は早く負けて、早く自由になりたいんだよ。としまえんに行きたいんだよ。江の島が俺を呼んでるんだよ。桑田佳祐よりも俺を呼んでるんだよ。
くそが。
やってやろうじゃねぇか。
気持ちを高らぶせながら、打席に入る。
あの時の私の集中力は極限に達していた。
全盛期の王貞治は球が止まって見えたという逸話があるが、まさに同じ感覚。
俺にはあの時太陽が止まって見えた。
ストライク!!
球は止まって見えなかった。
いやこれは太陽で目が眩んでしまったのだろう。
よし次は打ってやる。
今思えば、辛い野球部も楽しかったな。
ここで打てれば最高に気持ちいいんだろうな。
あ、俺もしかしてまだ野球部続けたいのかな。
あぁ何で今更気付いたんだろう。
遅すぎだ。
・・・・・・・・・・・・
絶対打ってやる。
ミラクルなんていらない。ただ、今打ちたい!
『よし!ここで打てれば俺の野球部3年間後悔はない!!』
ピッチャーが球を投げた・・・・・・!
ボール!!
アウト!!
1塁ランナーがノーサイン盗塁失敗でゲームセット。
二度と野球はやらないと誓った。