スマホを使って作業療法を~シニアのデジタル活用で見えた可能性
スマートフォンが普及し、今や一人1台持ちの時代になりました。 2025年のモバイル社会研究所の調査によると、シニア層のスマホ使用率は60代で94%、70代で84%、80代前半でも68%にのぼるそうです。高齢者の方々にとっても、スマホが日常の一部になっているのが現実です。
それなら、スマホの使用自体を「作業」としてリハビリに活用することも可能ですよね。今回は、私が実際に現場で実践しているケースをご紹介します。
「できない自分」に落ち込む90代女性への提案
私が担当している90代の女性利用者様。圧迫骨折後に円背姿勢が強くなっていました。昼間は独居ですが、洗濯物の取り入れと、夕食の1品を自分で作ることを日課としていました。
あるとき少しうつむきながらこうお話しされました。
「毎日家事はやらなあかんよね。でも、しんどいときもあるし、やめてしまうこともある……。私、あかんね」
本来はとても明るい方なのですが、日課が続かないことに責任を感じ、自信を失いかけていました。体調によって続かないことなんて誰にでもあることです。三日坊主にすらならないことだって珍しくありません。(何を隠そう、私自身も続かないタイプで、強く共感!)
そこで私は、自分が実践している「日記アプリに、今日の出来事を写真と一言コメントで残す方法」を紹介してみました。
「こんな私でもできる、簡単な方法ですよ。忘れたって別にいいんです。コメントも音声入力を使えば1分程度で終わります。記録が溜まっていけば、振り返ったときにきっと自信になりますよ」
まずはリハビリの時間にデモンストレーションを行い、写真に一言を添える練習からスタートしました。こうして「今日の夕食を写真に収めてコメントを載せる作業」が始まりました。
「義務」から「自己表現」への変化
変化は少しずつ現れました。 最初はおかずだけを写した写真だったのですが、だんだんと見栄えを意識されるようになり、ランチョンマットを敷いて全体をきれいに見せたり、彩りを添えたりといった工夫が見えるようになってきたのです。
コメントも、「ちょっとした感想も載せてみてくださいね」とお願いしたところ、なんと絵文字を使って「我ながらあっぱれ!」などと表現されるように!
毎回、表現が本当に豊かになっていきました。 (個人的にはインスタグラムとかも始めてほしいくらいですが、それはちょっと欲張りですね。笑)
スマホが紡ぐ、家族とのつながりと共有のプロセス
今では、毎回の訪問時に「どんな1週間だったか」の報告を受けるとともに、どこへ出かけたか、どれくらい歩いたか、どんな面白いことがあったかなどを、スマホの画面を一緒に見ながら伺っています。
スマホを「がんばりやつらさを共有するための記録媒体」として使用できるようになりました。
調子が良ければ活動量が増えていることが一目で分かっていいですよ。
この記録をきっかけに、娘様の協力も得やすくなりました。
これからは、こうしたスマホを活用した作業療法(OT)が、もっともっと広がっていくかもしれません。

