この世に生まれ出てきたとは思えない
向井理と片桐はいりが姉弟という設定のこの映画。
レビューサイトの評価通り3.5前後の良作でした。
監督/脚本/原作:西田征史
出演:向井理、片桐はいり、山本美月、及川光博、ムロツヨシ、寿美菜子 ほか
2014年 114分 日本
◆ストーリー◆
恋に臆病な33歳の弟・進と40歳の姉より子は、1つ屋根の下仲良く暮らしていた。
2人にはそれぞれ、気になるけどなかなか発展しない恋の相手がいる。
姉と弟は勇気を振り絞って一歩を踏み出すがー……。
脚本家として活躍する西田征史が2012年に出版した同名小説の映画化。
2013年に舞台化されており、片桐はいりと向井理で上演されている。
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エンタメを追いかけていると、当然のようにさまざまな芸能人の方々を見ることになる。
すると、だんだん顔面識別能力が上がってきて、一瞬しか映らないモブでさえも
「あれ、この人見たことあるぞ」と、なる。
それをエンドロールで答え合わせするのも一種の醍醐味。
今作でもうれしい発見がありました。
片桐はいりの小学・中学時代を演じているのが、うらんちゃんでした。
彼女はスターダストプロモーション芸能3部に昨年(今年?)設立された3Bのメンバー。
今年1月の「俺の藤井」にも出演していて、とても印象に残ったひとりでした。
かわいいんだけど、1回見たらとても印象に残るユニークな顔をしていて、
片桐はいりの子供のころの役に、なるほどピッタリだなと思いました。
登場シーンもセリフも多く、表情もよかったです。
同じく3部の小田桐汐里も出演してますが、一瞬出てきたあの子だろうなあって感じ。
これも片桐はいりさんがスタダ所属だからこその巡り合わせ。
そんなことを考えながら映画を見るのも、また楽しかったりするのです。
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この映画の主人公、向井理演じる小野寺進。
彼、野比のび太ソックリですよね。
でも「ドラえもん」を彷彿とさせるの、それだけじゃないんです。
家! 小野寺家!
まんま野比家じゃねーか!
屋根の感じとか、玄関の雰囲気もさることながら、
2階の進の部屋から見える景色が、子供のころ毎週金曜夜7時から見た
あの風景のまんまでした。
なんでこんなにドラえもんなんだ。
気になってしかたないので、とりあえず姉のより子が誰に当てはまるのか
考えながら見てたんだけど、ドラえもんでもジャイ子でもなさそうだし……。
単純にノスタルジーの象徴なんだろうか……。
何か解釈があったら是非教えて欲しいです。
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特に振り幅の大きい物語ではないんですが、映像の描写が丁寧なのと、
わかりやすく象徴することがあって細かいことに気づきながら楽しめる映画でした。
例えば、色。
進は黄色の服を何着か着て登場しているんだけど、恋の相手である薫の
初登場シーンも黄色い服を着ているんだよね。
出会った時点で、特に明確に恋に落ちるポイントがあるわけじゃないんだけど
服の色が同じことで、ちょっとかわいいな以上の運命めいたものを感じさせる。
わかりやすくて、押し付けがましくない演出。
次に喫茶店のシーン。
ここで薫は髪に黄色い髪飾りをつけている。
2人の距離がグッと近づくシーンでも、2人は黄色を身につけている。
姉のより子は赤。
これも着ている服に赤が多かったり、トウガラシだったりするんだけど、
象徴的な使い方をしているのが、片思いの相手である浅野の脈ナシを実感するシーン。
自分へのプレゼントだと思って、キャンドルを薦めるより子だが、
浅野がプレゼントをしたい相手は他の女性だと知る。
ここで、より子が薦めていたキャンドルの色が赤。
より子が選ばれなかったことが、より強調されるような使い方をしている。
この色の使い方がおもしろいのが全部、
だから何? 程度なのがおもしろい。
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もう1点、フードコーディネーターが入っていて食べ物の描写がとても優しい印象を与える。
映像は映るものが意味を持っていて、それを読んでいくのが
1つのおもしろさだと思うんだけど、この映画はそれがとてもわかりやすい。
映像を記号として読み解くっていうのが、イマイチどういうことかわからない人は是非、
この映画で体験してみてほしい。
例えば、より子が進からもらったプレゼントの封筒を冷蔵庫に貼るシーン。
薫の部屋で「大事なものは何でも冷蔵庫に貼っちゃうのよね」と話すくだりがあり、
冷蔵庫に貼ること=より子がとてもうれしく思っていることを意味している。
そういうのが張り巡らされている中で、
どうにもわからないのが最後の2本並んだトウガラシ。
全部、わかりやすいものばかりだったことを考えると、トウガラシが意味するものが
そんなに複雑なメッセージだとは思えない。
このシーン以外でトウガラシが出てきたのは、物語冒頭の回想シーン。
まだ子供のより子が進に、トウガラシはカリントウのようなものだと吹き込み、
食べた進が悶絶。進がより子に殺意を抱いた、とふんわり思い出すシーンだ。
ただ、仲の良い姉弟のすがたを象徴しているだけなのか。
カリントウのように見えるトウガラシ、だとすると何を伝えるんだろう。
それともより子の赤の象徴?
いや、そんなわかりにくいこと、こんな最後でブッ込むとは考えづらい……。
翌日、トウガラシの花言葉を検索してみたが、これもどうも当てはまらない。
これだと思う解釈があれば、教えてください。
あとあれだね、記号といえば、麻生久美子は完全に
麻生久美子という映像的記号として完成された感あるね。

▲においを登場させてポイントに持ってきたのもなかなか。
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ともあれ、全体を通して非常に雰囲気のいい映画です。
より子が傷心のままタクシーで自宅まで帰ってしまうシーンからの部屋で号泣。
進が気づいて、一旦玄関に戻って大きな声で言う「ただいま」などの優しさもホッコリ。
タクシーの窓からカップルが見えるカットは「なんで私だけ……」と涙を誘うし、
止まった途端にメーターが上がるし、結構な金額になってるし。
そんなところでププッと笑ってしまう。
休日に気合い入れて見に行く映画じゃないんだけど、ちょっと仕事が早く終わった日に
ひとりで見るのにちょうどいい。
■2014 RECORD■





