減価償却資産の耐用年数に関する省令における残存価値廃止について<敷金診断士> |  NPO法人日本住宅性能検査協会 建築・不動産ADR総合研究所(AAI)

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減価償却資産の耐用年数に関する省令における残存価値廃止について

概要

2008年(平成19年)4月1日より、減価償却資産の耐用年数に関する省令において、残存価値制度が廃止されました。 これに伴い、従来の「取得価額 × 残存割合 = 残存価額」という計算式による残存価額の算定ではなく、耐用年数経過時の残存簿価を1円まで減価償却できるようになりました。

 

改正の背景

この改正は、減価償却制度の簡素化・合理化を目的として行われました。 従来の残存価値制度は、資産の実際の価値を算定することが困難である、事務負担が大きいなどの課題がありました。

 

改正後の主なポイント

  • 償却可能限度額の導入: 取得価額の95%相当額まで償却可能となりました。
  • 耐用年数経過時の残存簿価1円まで償却可能: 従来の残存価額ではなく、耐用年数経過時に残存簿価を1円まで減価償却できます。
  • 特例償却制度の拡充: 一定の条件を満たす資産について、耐用年数を短縮して償却できる特例償却制度が拡充されました。
 

影響

この改正により、企業の経理事務負担が軽減され、資産の減価償却方法がより明確になりました。 また、耐用年数を短縮できる特例償却制度の拡充により、研究開発費等の投資を促進する効果も期待されています。

 

減価償却資産の耐用年数に関する省令と原状回復を巡るトラブルとガイドライン(国交省)の関係性

1. はじめに

減価償却資産の耐用年数に関する省令と原状回復を巡るトラブルとガイドライン(国土交通省)は、一見、全く異なる2つの制度のように見えますが、実は密接な関係があります。

 

2. 減価償却資産の耐用年数に関する省令

この省令は、税法上の減価償却制度において、資産ごとに定められた耐用年数を定めたものです。耐用年数とは、その資産が使用できる期間を指します。

 

3. 原状回復を巡るトラブルとガイドライン

このガイドラインは、賃貸住宅の退去時に生じる原状回復に関するトラブルを未然に防止し、円滑な解決を図るために国土交通省が策定したものです。

 

4. 両者の関係性

4.1 原状回復における経過年数の考慮

ガイドラインでは、原状回復義務の範囲を判断する際に、建物の経過年数を考慮することが重要であるとされています。これは、建物が経年劣化していくことに伴い、自然と傷みが生じるのは避けられないという考え方からです。

具体的には、ガイドラインでは、以下の3つの区分に基づいて、経過年数に応じた原状回復の範囲を例示しています。

  • 築10年未満: 軽微な損耗・劣化のみを原状回復の対象とする
  • 築10年~15年: 経年劣化による通常の損耗・劣化の範囲内であれば原状回復の対象とする
  • 築15年以上: 経年劣化による著しい損耗・劣化であっても、原状回復の対象となる場合がある

4.2 減価償却資産の耐用年数との整合性

上記のように、ガイドラインでは経過年数を考慮して原状回復の範囲を判断していますが、これは、減価償却資産の耐用年数に基づいて建物の価値が減少していくという考え方と整合性があると言えます。

例えば、建物の耐用年数が30年と定められている場合、築10年経過した建物は価値が3分の2程度に減少していると考えられます。従って、ガイドラインでは、築10年未満の建物については軽微な損耗・劣化のみを原状回復の対象とするとしているのです。

 

5. まとめ

減価償却資産の耐用年数に関する省令と原状回復を巡るトラブルとガイドライン(国土交通省)は、建物の経年劣化を考慮した制度設計という点で密接に関係しています。

原状回復トラブルを未然に防止するためには、これらの制度の内容を理解することが重要です。

 

原状回復を巡るトラブルとガイドライン(国交省)P24

経過年数の考慮等

 【主な設備の耐用年数】

●耐用年数5年のもの

 ・流し台

●耐用年数6年のもの

 ・冷蔵庫、暖房用機器(エアコン、ルームクーラー、ストーブ等)

 ・電気冷蔵庫、ガス器具(ガスレンジ)

 ・インターホン

●耐用年数8年のもの

 ・主として金属製以外の家具(書棚、タンス、戸棚,茶ダンス)

●耐用年数15年のもの

 ・便器、洗面台等の給排水・衛生設備

 ・主として金属製の器具・設備

●当該建物の耐用年数が適用されるもの

 ・ユニットバス、浴槽、下駄箱(建物の固着して一体不可分のもの)

参考情報