空き家相続時の選択肢と所有者の責務強化
2023年12月の法改正で、空き家所有者の責務が強化されました。
所有者に求められること
- 定期的な管理: 通気、換気、排水設備の通水、敷地内の清掃、庭木の剪定、郵便物の確認・整理など
- 冬期の対策: 給水管の元栓の閉栓、雪下ろし、擁壁の水抜き穴の清掃
- 建物の状態の確認: 破損、汚損、腐食などのチェック
- 必要に応じて修繕・補修: 建物の倒壊、健康被害の誘発、景観悪化などを防ぐ
行政の助言・指導・勧告
- 対象範囲拡大: 特定空き家だけでなく、管理不全空き家も対象
- 勧告に従わない場合: 固定資産税などの税制優遇措置が受けられなくなる
空き家の活用方法
- 売却: 需要の高い地域にある空き家は売却しやすい
- 賃貸: 需要が不確実な地域でも、賃貸で収益を得られる可能性がある
- 自身で利用: 住居やセカンドハウスとして利用する
早めの対策が重要
- 売却・賃貸が難しい空き家は、早めに売却を検討する
- 相続した一戸建ては、3年以内に売却すれば3000万円の特別控除を受けられる
参考情報
- 総務省: https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2018/pdf/g_gaiyou.pdf
- 国土交通省: https://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000170.html
空き家の所有者責務強化 壁・窓破損も税負担増す可能性
https://www.nikkei.com/
相続で空き家となった実家を所有することになったものの、売るべきか、貸すべきか、放置していてもよいのかといった相談が筆者のもとにも多く寄せられます。総務省の調査によれば、空き家の総数はこの20年で約1.5倍の849万戸に増加したそうです。このうち売却・賃貸・使用予定のない、いわば本当の空き家が349万戸に上ります。こうした中、2023年12月に空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家対策特別措置法)の一部を改正する法律が施行され、空き家所有者の責務が強化されました。空き家となった実家の所有者にはどのような影響が及ぶのでしょうか。
行政の空き家対策に「協力」が努力義務に
これまでは、空き家の所有者は周辺の生活環境に影響を及ぼさないよう「空家等の適切な管理に努めるものとする」と規定されていました。改正空き家対策特別措置法ではこれに加えて「国又は地方公共団体が実施する空家等に関する施策に協力するよう努めなければならない」という条文が追加されました。行政の空き家対策に協力することが、所有者の努力義務となったのです。
あわせて24年1月に、国土交通省が空き家の管理に関するチェックリストを公表しました。チェックリストでは、持ち主が行うべき定期的な管理として、通気や換気、排水設備の通水、敷地内の清掃、庭木の枝の剪定(せんてい)、郵便物等の確認・整理に加え、冬期の場合は給水管の元栓の閉栓や積雪の状況に応じた雪下ろし、擁壁がある場合は水抜き穴の清掃を挙げています。
さらに建物の破損や汚損、腐食などのチェック項目も挙げられ、建物倒壊、健康被害の誘発、景観悪化など、周辺環境に大きな影響を及ぼさないよう修繕・補修することを推奨しています。
助言・指導・勧告の対象空き家の範囲が拡大
定期的な管理とはいっても、それなりに労力はかかりますし、周辺環境に影響が及びかねない状態であれば、専門業者に補修などを依頼しなければなりません。遠隔地ならなおさら大変です。
今回の法改正は努力義務で、結局のところ今まで通りの対応でも問題ないのではと考える人もいそうですが、そう簡単ではありません。所有者責務の強化を後押しするルール変更がなされています。
これまでは、放置すれば倒壊のおそれがあるなど周囲に著しい悪影響を及ぼす「特定空き家」に認定されると、自治体は所有者に対して空き家を適切に管理するよう助言または指導を行い、改善されない場合は勧告する仕組みでした。
勧告を受けた空き家の敷地は、翌年から税制上の軽減措置(固定資産税については200平方メートルまでは6分の1、200平方メートルを超える部分は3分の1、都市計画税については200平方メートルまでは3分の1、200平方メートルを超える部分は3分の2に軽減)が受けられなくなるというルールがありました。
しかし今回の改正では、助言・指導・勧告の対象が広がりました。特定空き家だけでなく、壁や窓が破損しているなど管理が行き届かず放置すれば特定空き家になるおそれのある空き家(管理不全空き家)も、市区町村長から勧告されれば税制上の特典を外し税負担が増える対象に加えたのです。国も空き家対策に対して本気になってきたということなのでしょう。
利用が難しそうなら早めに売却検討を
国交省の調査によると「一定の地域に空き家等が集中している」とする市区町村が約4分の1あり、集中している地域は、中心市街地、密集住宅市街地、郊外住宅団地などが多いとの結果でした。こうした地域にある空き家ならば、人に貸すか売ることができる可能性がありそうです。その場合は労力と費用は掛かりますが、定期的に管理をしながら様子を見つつ、処分したり賃貸運用したりすることも可能でしょう。
一方、住宅の集積がなく市街地から遠いなど、住宅需要の少ない地域にある空き家については活用の可能性・売却の可能性は低いかもしれません。そうした空き家は少しでも早く売却などに向けた活動を始めることが肝要でしょう。売るに売れない、貸すに貸せない不動産となれば、管理費用と固定資産税などだけが重くのしかかる「負動産」になりかねないからです。
耐震基準が変わる前の1981年5月31日以前に建った一戸建てを親から相続で承継した人は、相続開始の日から3年を経過する日を含む年の12月31日までに、一定の要件を満たしてその一戸建てを譲渡した場合には、譲渡所得から3000万円を特別控除できるという特例があります。こうした特例も視野に入れ、早めに処分を検討することも重要でしょう。
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