裁判事例   ゴミステーションの設置と瑕疵担保責任 |  NPO法人日本住宅性能検査協会 建築・不動産ADR総合研究所(AAI)

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裁判事例
ゴミステーションの設置と瑕疵担保責任
     

神戸地裁尼崎支部判決 平成13年5月29日
(判例集未登載)

《要旨》
 ゴミステーションの設置は隠れたる瑕疵には当たらないとして、買主の売主等に対する損害賠償請求が棄却された事例

 

(1) 事案の概要
 平成10年9月、買主Xは、Y1と土地建物売買契約を締結し、Y2は媒介業者として関与した。
 本件宅地の前面道路の本件宅地寄りの場所は、地域住民が一時的にゴミを置くゴミステーションになっていたが、X、Y1及びY2は、本件売買契約当時その事実を知らなかった。

その後(引渡し前)、ゴミステーションの存在を知ったXは、Y2に対し、この旨の説明がなく、重要事項説明書にもその記載がなかったとして苦情を述べた。


 これに対して、Y2の担当者が地元自治会の班長や市当局に相談することにより、それぞれ一定の善処をすることができたが、Xは、ゴミステーションの存在は隠れたる瑕疵に当たるなどと主張して、Y1に対し、瑕疵担保責任に基づく損害賠償を、また、Y2に対し、宅建業法に基づく告知義務違反があったなどと主張して、不法行為責任に基づく損害賠償を求めて提訴した。

(2) 判決の要旨
 (ア)本件ゴミステーションは、誰かが住宅前にこれを置くことを覚悟しなければならず、恒久的な施設があるわけではなく、自治会でその場所が決められており、永続的に同じ場所に決められているという性質のものではない。


 (イ)したがって、本件ゴミステーションの性質及び内容、形状からすれば、本件土地建物が住宅として、通常有すべき品質を欠き瑕疵があるというのは相当ではない。


 (ウ)Y2の担当者の行為は、ゴミステーション問題の解決に向けての尽力を約した性質のものと解すべきであり、解決約束の債務不履行を理由とする損害賠償請求は理由がない。


 (エ)Y2は、売買契約当時、本件土地建物の前がゴミステーションになっていることを知らなかったのだから、Y2に宅建業法に基づく告知義務違反はなく、Y2の対応がXらと近隣住民との不協和を生じさせたとの証拠もないから、Y2に対する不法行為に基づく損害賠償請求は理由がない。

 

(3) まとめ
 ゴミ集積所の設置場所は、例えば、集積施設の整備状況・規模によっては、嫌悪施設と考えられる場合がある。

購入者の日常生活に負担・支障が生ずることもあるから、宅建業者は、事前に集積所の位置や状況等を調査し、できる限り正確な情報を提供することが必要といえる。